prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「LAMB ラム」

2022年10月07日 | 映画
ラム=子羊という連想から何かの捧げ物という意味もあるのか、姿形の、少なくともつぶらな瞳のかわいらしさのコントラストもあって不気味。

異形の赤ん坊?が日常に入り込んでくるのはちょっと「イレイザーヘッド」を思わせたりもして、あそこで描かれた父親になりたくないまま親になってしまった男の恐怖と妄想ではなく、実の子供に恵まれないが母親になっている女性のオブセッションを描いた感。

前半から人里離れた地のロケーションのリアリズムから、後半の本来あり得ないヴィジュアルにシームレスに移行する。
極度にセリフを切り詰めた文体、静寂が張り合っているような音の使い方といい、作りはアートフィルムなのだが、VFXの発達が前提にないと、土台のイメージそのものが発想できないだろう。
アートフィルムの技法(たとえば過去と現在の交錯といった)が一般のドラマに吸収されたように、主に見世物として発達したVFXがアートに吸収された感もある。

ちらっと見せるドラムセットとVHSに記録されているバンドのMTV映像でこの一家の過去と現在とのコントラストを見せる手際の良さ。

エンドタイトルに流れるのがヘンデルの「サラバンド」というのが不思議な選曲。「バリー・リンドン」とはどう見ても直接の関係はない。