モダンなセンスでアップデートされたヤクザ映画。
そのセンスの部分は魅力的なディテールが多い。主演の岡田准一が兼任したアクションシーンの振り付け、MIYAVIはじめ男たちのスーツの着こなし、ヤクザ事務所の掛け軸に虎の絨緞に日本刀といったルーティンからおよそかけ離れた現代美術が並んでいるインテリア。
ただ全体像とすると、ストーリーテリングの部分で人物相関図を絵解きで説明するのにテンポを上げ過ぎて見ていて、え、え、という感じですり抜けてしまう。説明嫌いにしても必要な説明はしてもらわないと。原作読まないとというので今読んでいるところ。
後になってわかってくるところも多いのだけれど、わからないように伏せておいて明かしていくのと、本当にわからないのとは違う。
ピアノを習っていた頃、よく「指が転がっている」という表現で注意されていて、つまりテンポよく弾くつもりでやたらと指を速く動かすけれど速いだけでのっぺりしてリズムもテンポも出ていない状態のことなのだが、そこまでひどくないにしてもテンポアップしている割に映画の中に引き込むノリがどうも意外と良くないところが散見する。
だから全体像が立ち上がってくる感じが弱い。
原田眞人監督が監督デビューした頃の著書(当時は真人表記)「ハリウッド映画特急」にマイケル・リッチーの「アイランド」評でカットを細かく割り過ぎているのと、「時には滑稽なくらいの村川透の長回し(「遊戯」シリーズあたりのか)」とを足して二で割ると個人的には丁度いいのだが、まあ人に期待することもないか、とある。私見ではリッチーより細かいくらい。
最近、監督名がエンドタイトルで止まるのは珍しいけれど、これはそう。
潜入捜査ものなわけだが、どこでバレるか、バレたらどうなるかといった、あるいは意外な人物が同類だった、といったメリハリが今一つ。
黒社会ものとは思えないくらい女性客多し。いい男がいっぱい出てくるからか。
しかし、「がきデカ」が出てくるとは思わなかったぞ。笑っていいのかどうか困った。