文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

銭形平次捕物控 016 人魚の死

2022-12-07 09:02:46 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 この事件は、東両国の見世物小屋で起きた殺人事件に関するものだ。この見世物というのは、讃州志度(現在の香川県さぬき市大字)の海女という触れ込み(実は相模出身。相模というのは今の神奈川県)のお松、お村という二人の美人海女が、水槽に潜って、龍王の明珠を取るという見世物だ。この潜るときの恰好が美女が腰巻一つで上はすっぽんぽん。昭和の中頃までは、海女さんは、海に潜るとき上半身は丸出しだった。誰ですか?そのころに戻りたいという人は?

 このお松が水槽に潜っているときに殺される。いっしょに水槽に潜っていたのは、お村だけ。果たしてお村が犯人か? これに乗り出したのが平次という訳だ。最後は見事このトリックを見破り、お村の冤罪を晴らしている。

 ところでこのころは、まだ石原の利助は元気だったようだ。このシリーズでは利助は中風気味なので、変わって、娘のお品が娘御用聞きとして出てくる場合が多いのだが、この話には本人が出てくる。

 また、このころには、八五郎は岡っ引きとして独り立ちしているようだ。、相変わらず平次を親分と仰ぎ、何かあると引っ張り出そうとするが、平時からこんなお説教をくらっている。

「馬鹿ツ、人間の端くれは判っているが、ツイ此間お札を頂いて、それでも一本立の御用聞になつたばかりじゃないか」

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

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むすぶと本。 『外科室』の一途

2022-12-01 09:21:03 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 

 主人公は、榎木むすぶという高校1年生の少年。彼には不思議な力がある。本の声が聞こえるのである。

 舞台は聖条学園。そう野村美月さんの代表作ともいえる「文学少女シリーズ」の舞台ともなった学園だ。そのシリーズの重要人物で学園理事長の孫娘、文学少女シリーズのヒロイン天野遠子の友人でもある姫倉麻貴の長男である悠人(はると)が3年生に在籍しており、むすぶとも親しい。また、このシリーズでは、麻貴は学園の理事長になっている。つまり、この物語は「文学少女」より少し後の時代の話なのである。

 むすぶは、その力を使って、学園の様々な事件を解決していくのだが、本をモチーフにしているのは「文学少女」と同じである。収録されているのは次の5編だが、このうち「異世界湯けむり☆うふふ大戦」だけは架空のラノベで他はいわゆる名作文学が取り上げられている。

〇「長くつ下のピッピ」の幸せな幸せな日
 駅の貸本からめぐるがハナちゃんのところに連れて行って欲しいと頼まれる。

〇「異世界湯けむり☆うふふ大戦」の緊急で重要なお願い
 駅ビルの大型書店の新刊コーナーで、「異世界湯けむり☆うふふ大戦」の作者と出会う。彼は売れない作家で、なんとか続編を出したいと思っていた。

〇逆さまから見た、誰も知らない本
 むすぶと同級生の若迫くんが、急に変になった。どうも本に罹患したらしい。その本とはなにか。ちなみに本に罹患するとは、本の世界に入り込みすぎるという病のことだ。

〇「十五少年漂流記」のやんちゃすぎる夏休み
 町の図書館で出会った「十五少年漂流記」は冒険をしたいと言う。その話を悠人にすると、無人島へ行くことになる。なぜか若迫くんも同行して。

〇「外科室」の一途
 町の小さな図書館に、いつも「外科室」を借りる成年がいた。「外科室」とは泉鏡花の作品で伯爵夫人と高峰という医学士の禁じられた恋心を描いたものだ。

 むすぶの恋人は、夜長姫である。夜長姫というのは、坂口安吾の作品「夜長姫と耳男」に出てくる人物である。そう本が恋人という表現は、よく使われるが、むすぶの場合は本当に本が恋人なのである。安吾の作品に出てくる夜長姫は耽美で冷酷で残酷な性格だ。こちらの夜長姫は、嫉妬深く口癖は「呪う」なのだが、それで何か悪いことが起きたことはないようだ。それにどこかかわいらしいのである。

 むすぶと夜長姫との出会いなど、まだわからないことも多いが、だんだん明らかになっていくのだろうか。

☆☆☆☆

 

 

 

 

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半七捕物帳 68 二人女房

2022-11-27 08:45:42 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 この作品は、半七捕物帳の中の話だ。このシリーズの多くの話と同様。前半はスリラー仕立て。後半は「不思議など何もなかった」とばかり、ミステリーにもどる。

 この作品も、明治になって、語り手に半七が思い出話をするというスタイルになっている。これは、半七が小金井に、幡随院長兵衛の法事で出かけたときの話だ。ついでに、府中の六所明神に参拝ということになった。六所明神とは、現在の大國魂神社でここでは闇祭りと書かれているが、くらやみ祭でも知られている。

 その闇祭りの夜、見物に来た四谷の和泉屋という呉服屋の跡取りの清七が宿場女郎のお国と心中してしまう。この府中には友蔵というとんでもないオヤジがいた。娘が二人いたが、なんと姉のお国を宿場女郎に売り、妹のお三は子守奉公に出しているという。清七はお国を身請けしようとしたが、友蔵は清七を騙して、身請けの金をだまし取ってしまう。この友蔵の家にはお国と清七が化けて出るとのもっぱらの噂だが、友蔵は平気の平左。相変わらず遊んで暮らしている。そして、この和泉屋の女房のお大が闇祭りの夜に江戸で行方不明になる。

 そして、闇祭りの見物に来た四ツ谷坂町の老舗の酒屋・伊豆屋の女房のお八重が、祭り見物の最中にこつぜんと消えてしまった。果たして二つの事件は関係があるのか。

 さすがは半七親分である。親分の名推理が冴えて、最後にはこの事件を見事に解決する。しかし、友蔵は最後には死罪になるのだが、もっと早く捕まえていれば、この悲劇も大分違ったものになったのではないだろうか。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ホーンテッド・キャンパス 雨のち雪月夜

2022-11-09 08:13:42 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 本書は、櫛木理宇さんによる「ホーンテッド・キャンパスシリーズ」の第6弾となる。超草食系男子の八神森司と超絶美少女の灘こよみたち雪越大のオカルト研究会のメンバーが怪奇な事件に立ち向かうというものである。ただ、灘こよみは美少女なのだが、目が悪く矯正もできないので、いつも眉間にしわがよってにらみつけるような感じなので、知らない人が見ればびっくりするかもしれない。でも森司はこよみの事が大好き。こよみもどうも森司の事が好きみたいである。

 この巻に収められているのは次の4つの怪異。1,2話に共通するのはビョーキということだろうか。

〇旅籠に降る雨
 非常勤講師の元教え子である駿河木綿子(旧姓倉持)は、倒産寸前の旅館を見事に立て直した。ところが、この旅館で、カエルや石などが降ったりという怪異が続く。

〇白のマージナル
 オカ研副部長の三田村藍と黒沼麟太郎部長、その従弟の黒沼泉水との出会いと、オカ研結成のきっかけ。この話では藍の家族構成が分かる。どうも兄と6歳離れた双子の弟たちがいるようだ。

〇よくない家
 森司はこよみへのクリスマスプレゼント用の資金を得るために、引っ越しのアルバイトに精を出すが・・・。

〇異形の礎
 合コンに参加した連中が、いわくつきのトンネルの慰霊碑を倒してしまった。そして参加した女子学生の一人に怪異が起こる。

 この巻では、全体を通して、森司の中学時代の部活仲間である津坂浩太というのが登場する。スポーツ推薦で東京の某有名大学に進学したという設定だ。私に言わせれば、そんな大学つぶせよと思うのだが、現実としては運動関係の大会の時くらいしか名前を聞かない大学はたくさんある。そして、この津坂浩太の役割はどうみてもお邪魔虫。森司とこよみは周りがやきもきしながらも少しづつ近づいているのに、こいつは、こよみのレベルが高すぎと、森司には相応しくないと言い続ける。

 こよみの母親はどうも森司とこよみの間を認めているらしい。次のような言葉から明らかだろう。

「八神くん、かわいい顔してるものね。どっちに似てもかわいい孫が生まれるって、こっちとしちゃ安心よね、おとうさん」(p338)

もちろん父親は微妙な立場だ。娘が可愛くって、絶対に嫁にはやらんというやつである。でも森司の簿記の家庭教師をやってくれるんのだから、半分は認めているということかな。果たして森司とこよみの関係はどうなるのか。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

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逃げろ光彦―内田康夫と5人の女たち

2022-11-05 12:53:58 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 

 内田さんの浅見光彦シリーズはほとんど読んでいるが、そういえばこれはまだ読んでないと手に取った。収録されているのは5つの短編。5つの短編を収めていくので5人の女たちという訳だ。みな浅見光彦シリーズの話かと思ったが、光彦も内田センセも表題作しか出てこない。また、5人の女たちと言っているが、5人以上出てくるのはご愛敬。

 内田さんは警部に捜査させるのが好きなようだ。「信濃のコロンボ」シリーズに出てくる竹村岩男の階級も警部だ。警部が現場に出ることがないとは言い切れないが、一応所轄の課長レベルの階級である。どちらかというと自分で操作するよりは部下に指揮命令する方が主になるのではないか。

「濡れていた紐」に使われているトリックは、よく分からない。紐は濡らして乾いたら縮む。警察がそれに思い当たるように紐を濡らしたというのだが、濡らさない方が、密室だと判断されて、自殺となる確率が高いと思うのだが。それにドアノブをどこに縛ったんだろう。

 前に書いたように光彦が出てくるのは表題作の「逃げろ光彦」だけであるが、どうも違和感がある。なんかいつもの光彦とちょっと違うんだよな。やはり浅見光彦シリーズは長編に限ると思う。

 5作に共通してのテーマは「女は怖い」ということか。

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

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銭形平次捕物控 278 苫三七の娘

2022-11-04 13:00:43 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 最初この表題を見て、「くさみの娘」かと思い、面白い題名だと思ったが、実は「とまさんしちの娘」と読むのが正解である。字をよく見れば「苦」ではなく「苫」である。苫三七というのは、江戸中どこにでも小屋を掛けて色々な芸を見せる芸達者な男である。

 その三七が首を縊って死んだという。三七には、お百合とお若という二人の娘があった。どちらも本当の子ではないが、三七はかわいがっていたという。どちらも美人だが、お百合の方は細面で愛嬌に乏しい冷たい美人タイプ、お若の方はぽっちゃりとした愛嬌のあるタイプだ。

 名探偵役の平次と対比するための迷探偵役は、ドラマではもっぱら三ノ輪の万七なのだが、この話では、平次の子分の八五郎がその役を務めている。この話では八五郎が、三度も女に抱き着かれて鼻の下を伸ばしている。そして三度目のときは、三七から預かった書付を取られてしまうのだ。この事件の裏には、大店の跡継ぎ問題があった。

 この作品を一言で表せば、作中にもある「外面如菩薩内心如夜叉」ということだろうか。この言葉は、いかにも優しそうな女性で実は、超悪女と言った女性に使うのだが、平次の謎解きを聞くと、ぴったりの言葉だと思うだろう。しかし八五郎には、まったく見る目がないことが、はっきりした(笑)

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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セカイの千怪奇 (1) 幽霊屋敷レイナムホール

2022-10-28 09:36:49 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 よくテレビで、怪奇現象やUMAが出てくる番組をやっている。うさんくさいなあと思いながらもつい視てしまう。この作品も様々な怪奇現象をモチーフにしている。

 主人公は、中学1年生の世界未知人という少年。彼には、母親を、不思議な光に攫われた過去がある。大学の考古学教授だった父世界豪とともに母親を探すというのが基本的なストーリーだ。

 収録されているのは、モアイ、レイナムホール、人魚、チュパカプラ、ホィア・バキュー・フォレストに関する5つの話。

 この作品の特徴としては、実際に存在するものをモチーフにしていることだろう(ただしチュカチャプラだけは存在が確かめられてはいない)。レイナムホールはイギリスにある有名な幽霊屋敷だし、ホィア・バキュー・フォレストはルーマニアに実在する呪いの森と言われるところだ。

 この手の作品には、敵役というかライバルというかにぎやかしというか、そういう役割の人物が出てくる。この小説においては、アンナ・フィッツジェラルドという大金持ちのお嬢様がその役割を果たしている。

 さて続巻にはどんな怪奇現象が出てくるのか。アンナとの関係はどうなるのか。そして未知人の母親が行方不明となった現象はストーリーにどのように絡んでくるのか? 色々と今後の展開が気になる。

☆☆☆☆

 

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ホーンテッド・キャンパス 幽霊たちとチョコレート

2022-10-20 09:39:33 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 

 本書は、ホーンテッド・キャンパスシリーズの2作目となる。ホラーな事件に雪越大(モデルは新潟大と思われる)オカルト研究会の面々が挑むというものだ。

 霊は当然のように出てくるが、オカ研のメンバーにはそれを払うような能力はない。この時点ではいわゆるみえる人が2人いっるだけだ。じゃあどのように事件を解決するのか。ホラーの起きた原因を突き止め、場合によっては霊を説き伏せるのだ。収録されているのは次の5編。

〇シネマジェニック
 映画研究会がコンペに出すためにとった作品に、いるはずのない女が移っていた。その女の正体は分かったものの元気に過ごしており、来週には結婚するという。

〇彼女の彼
 法学部2年の綿貫は、二年前失踪した岸本美織の幻が急に家のあちこちで見るようになったという。

〇幽霊の多い居酒屋
 光桐学院御用達の居酒屋に「幽霊居酒屋」と呼ばれているものがあるが、なぜか気味悪がられたりせずに、よく打ち上げや飲み会で使われていた。

〇鏡の中の
 非常勤講師の矢田の紹介で訪れた2年生の新藤という男は、鏡に映らないようになった。

〇人形花嫁
 雪大OGの松原鞠花は、夫の家に伝わる活き人形の不気味な現象に悩んでいた。

 このオカルト的な部分を縦糸とするなら、横糸は八神森司と灘こよみのラブコメだろう。傍からみれば明らかに相思相愛なのだが、なかなか二人の仲は進展しない。特に森司の方は、自分が灘のような美少女にモテるはずがないと思い込んでいるというヘタレぶりである。なおこよみは、森司のことを八神先輩と呼んでいる。確かに高校のころは森司が1学年上だったが、1浪して大学に入っているのに対して、こよみの方は現役で合格しているから、二人は実は同級生なのだ。でも、これは男子にとってはちょっと辛いかも(笑)

 どんな事件が出てくるかより、二人の仲はどうなっていくのかの方が気になる、気になる。しかし、森司君、無事にこよみちゃんからチョコレートをもらえたようで。ちなみにこよみのタイプは火盗改めの長谷川平蔵らしい。これは森司君、大丈夫か?

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

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魔弾の射手 :天久鷹央の事件カルテ

2022-10-16 09:31:31 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 西東京市という地にそびえる時計山病院と呼ばれる廃病院。そこは自殺の名所として有名だった。そこが廃病院になったのは11年前の医療ミスに端を発する。そして10人以上の人が、時計台から飛び降り自殺を行っているのだ。そして時計山病院の院長だった、時山剛一郎の娘、恵子と兄の文太が時計台から飛び降り自殺をする。果たしてそれは本当に自殺だったのか。

 本書の魅力は2つあると思う。一つ目は小鳥遊優とその天敵たる鴻ノ池舞との掛け合いや小鳥遊と鷹央の掛け合い、鷹央とその姉の真鶴との掛け合いなどいろいろあるが、どれもユーモラスなのだ。特に面白いのが小鳥遊と舞との掛け合い。舞は研修医なのに、小鳥遊をからかうのが生きがいのようだ。だから小鳥遊と鷹央の恋バナには熱心である。そしてちょっちゅう彼に関節技を決めている。そう舞は合気道女子なのだ。

 鷹央と真鶴との関係も面白い。傍若無人な鷹央だが、唯一恐れる人物がいる。それが姉の真鶴なのだ。でも単に厳しいだけではない。、鷹央がインフルエンザで倒れたときなど、傍で看病するという妹思いの一面もあるのだ。

 もう一つの魅力は、作者が現役の医師らしく、医学的な知識を駆使してトリックを考えているところだ。現にこのトリックも、相当医学に詳しくないと解けないだろう。そういった意味で医療ミステリーらしいといえよう。

 ただこの部分はいただけない。

「その扉に高圧電流が流れていて感電したか・・・」(p342)
「高圧電流」というのは俗語として、すっかり広まった観があるが、電気工学を多少なりとも学んだものなら、まず使わない言葉だ。私なら「高電圧がかかっている」と書く。「高圧電流」というのは、電流の大きさについては何も言っていないのだ。ついでに言うと電流は常時流れている訳ではない。そもそも電流の通り道が確立されないと電流は流れることができない。このあたりに同じ理系でも数物系と医学・生物系の間には大きな谷のあることを感じてしまう。

☆☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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銭形平次捕物控 290 影法師

2022-10-14 09:33:30 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)

 

 本書も銭形平次捕物控の中の話のひとつだ。前半はホラー風味で、後半は完全にミステリーとなっており、前半で出てきた不思議なことの謎解きも含まれている。八五郎が聞いた話によると、市ケ谷柳谷にある金貸し・菊屋の倅彦太郎が女の影法師に取りつかれて怯えているというのだ。この話は發端篇、解決篇に分かれており、前者がホラー風味で、後者がミステリーという訳である。

 この菊屋の主人の市十郎が殺される。実は、彦太郎は、市十郎の倅となっているが、本当の倅ではなく、先代の甥で、市十六は養子なので、本来なら彦太郎の方が正統らしい。この事件に乗り出すのが平次という訳だ。

 今回の話には、四ツ谷の與吉という若い岡っ引きが出てくる。これまで読んだ銭形平次に話には出てこなかったが、岡っ引きとして独り立ちしているらしいから現在売り出し中という訳だ。

 ホラーとミステリーの融合というのは、半七捕物帳でよくみられるパターンだが、この話も影響を受けているんだろうなあ。いずれにしても平次の名推理が光り、最後は落ち着くところにおちついたという感じだ。

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

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