文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第一部「兵士の娘I」

2017-01-08 17:53:01 | 書評:小説(SF/ファンタジー)
本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~ 第一部「兵士の娘I」
クリエーター情報なし
TOブックス

・香月美夜

 本が大好きで、死ぬときは、本に埋もれて死にたいと思っていた女子大生の本須麗乃(もとすうらの)。 大学図書館に就職も決まっていたのに、地震で本当に本に埋もれて死んでしまった(はず)。ところが、目が覚めると、なぜか異世界にいて、マインという虚弱体質の幼女として生まれ変わっていた。

 その世界では、紙も印刷技術もなく、本などは、羊皮紙に書き写して作る超高級品。マイン一家のような庶民家庭ではお目にかかることもない。(なにしろ羊皮紙1枚で、父親の兵士としての給料1ヶ月分が飛んでしまうのだ。ちなみにインクも目の玉が飛び出そうなほど高い。)

 本が手に入らないのなら、自分で作ってしまえとマインが奮闘するというのが基本的な流れのようだ。なにしろ彼女には、マインとしての記憶だけでなく、麗乃の記憶もあるのだ。どこかの名探偵じゃないが、体は子供だけど頭脳は大人状態。おまけに、元々本好きなので、色々な知識も半端じゃない。

 麗乃がマインとして生まれ変わった世界は、文明的にはかなり遅れているようだ。料理やアクセサリー、書類づくりに至るまで、彼女が持つ大人の文明人としての知識は、周りの者を驚かせる。

 なにしろ、見かけは可愛らしい幼女で、おまけに病弱のために人より発育が遅れているのだ。本当は5歳なのに3歳に間違われることもあるような娘である。それが、ちゃんと書類づくりや、大人も苦手な計算なんかもやってしまうのだから、周りが驚くのも当然だろう。(ただ、マインの父親は、可愛い病弱な娘としか認識していないようだが。)
 
 肝心の本作りの方も、エジプト文明(パピルス)からメソポタミア文明(粘土板)、黄河文明(木簡)と、なんとか紙の代わりになるものをと試してはみるのだが、これが失敗の連続。次はいよいよ紙づくりにチャレンジするようだが、果たしてどうなるのかは、次巻以降のお楽しみのようだ。

 最後の方で、魔法に関する話題も出ていたので、この世界には、魔法も存在しているようである。この魔法が、どうマインに絡んでくるのかも気になるところである。

 ところで、この表紙イラスト、最初は、とっても可愛い美少女イラストに見えたのだが、実際に手に取るとまさかの美幼女(笑)。いくら美少女ものが好きな私でも、さすがに対象レンジ外だ。しかし、ストーリーはなかなか面白く、この1巻目が終わった時は、すっかりマインちゃんの魅力に夢中。

 果たして、マインは、この世界で本を作れるのか。そして望み通り司書になれるのか。続きが気になるが、まさか、「夢オチ」だったなんてことはないよね。

☆☆☆☆☆

※初出は、ブログ「風竜胆の書評」です。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする