文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
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書評:領主館の花嫁たち

2017-01-16 12:11:25 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
領主館の花嫁たち (創元推理文庫)
クリエーター情報なし
東京創元社

・クリスチアナ・ブランド、(訳)猪俣美江子

 舞台は、19世紀前半のイギリス。本書はアバダール屋敷に住むヒルボーン一族にかけられた呪いを描いたゴシックホラーである。

 そもそもの始まりは、250年前、アバダール屋敷の主である郷士サー・エドワード・ヒルボーンのバカ娘であるイザベーラの不行状から始まった。彼女が宮廷で、将来を誓ったはずのリチャード。ところがイザベーラは、あれは一時の遊びよとばかり、地元に帰るとあっさり彼を袖にしてしまったのだ。

 姉のレノーラと共に、イザベルと結婚できるとばかり思ってアバダール屋敷を訪れたリチャードは、絶望のあまり自殺してしまう。レノーラの怒ること、怒ること。未来永劫、この家に続く呪いをかけたのである。そう、その後にも幽霊としてリチャードとレノーラはいっしょに出てくるのだが、この家にかかった呪いはレノーラによるものなのだ。それにしても、このレノーラ、なんというブラコンぶりだろう。

 そして、時代は1840年に飛ぶ。アリス・テターマン(テティ)は、愛らしい双子の姉妹の家庭教師として、アバダール屋敷を訪れる。やがて彼女たちの継母となるテティは、その可愛らしさにいっぺんに夢中になってしまった。

 しかし双子とはいえ、二人の性格は相当違っている。姉のクリスティーンはおっとりとした優しい娘なのに対して、妹のリネスは奔放なバカ娘。そう呪いの元凶となったイザベルの性質をもっとも受けて継いでいるといってもよいだろう。そして、このバカ娘、姉が持っているだけで、それを欲しがるという困ったところがある。周りももっと厳しくしつけろよと思うのだが、その見かけの愛らしさに振り回されてしまうのだ。

 そして二人がお年頃になった頃、その性格から、リネスは姉が好きだった幼馴染のローレンスを横取りしてしまった。アバダール屋敷の呪いは、ヒルボーンの血を引いているいないに関わらず、花嫁に対してかかってくる。つまり、今度呪われるのは、リネスとなるわけだが、優しいクリスティーンは、リネスが呪われるのを防ぐためにある企みを実行に移したのだ。

 ところがバカ娘のリネスのこと、ローレンスは退屈だから別れて、元カレのアーサーといっしょになるなんてことを言いだすのだ。そりゃ、クリスティーン怒るわな。レノーラの呪いを自分が引き継いでリネスに祟りをおよぼすとまで言い出すのだ。

 読み終わった時には、クリスティーンがとっても可愛そうで、リネスのアホ娘ぶりが腹立たしくなる。いっそ「リネスのバカ」とでも名付けたくなるような作品だった。

☆☆☆

※本記事の初出は「本が好き!」です。


コメント
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