文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

書評:悪女

2018-05-21 18:13:59 | 書評:小説(ミステリー・ホラー)
悪女 (創元推理文庫)
クリエーター情報なし
東京創元社

・マルク・パストル、(訳)白川貴子

 本書は、実話をベースにした物語。舞台は、20世紀初頭のスペイン・バルセロナだ。訳者あと書きによれば、元々はカタルーニャ語で出版され、その後各言語に翻訳されたようだ。

 描かれているのは、「吸血鬼」と呼ばれた稀代の悪女エンリケタの物語だ。悪女とというと、なんだか妖艶な美女という感じがするのだが、むしろ鬼婆と呼んだ方が本質を表しているかもしれない。

 なにしろ、子供を誘拐し、幼児売春などを行わせた挙句に、用済みになると殺して、死体から様々な怪しい薬を作っていたという。まさに悪魔の所業。子供から作った薬は、結核や梅毒にも効くとされていたようだ。そのため顧客は上流階級に多く、エンリケタはなかなか逮捕されなかったという。

 本作で、誘拐事件を捜査していくのがコルボ警部とその相棒のマルサノ警部なのだが、政治家連中から警察署長に圧力がかかtって、誘拐事件など発生していないと捜査の中止を命ぜられる。しかし、二人はそれに反して事件を追い求めていくわけだが、この辺りはまるで刑事ドラマのテンプレを見ているようだ。

 もっとも、コルボ警部の方も真っ白というわけではない。捜査の過程で相手を殴りつけるというのはざらだし、犯人と「交渉」して現金(いわゆる袖の下)も受けっとっているようだ。しかし、最後にコルボさん、あんなになるというのはちょと意外だったかも。

 ところで、作中にぺセタという単位のお金がよく出てくるのだが、国や時代の違いで価値がよくわからない。可能なら注釈ででも、今の日本円に直せばどのくらいの価値があるのかを示しておけばもっと作品を楽しめると思った。

☆☆☆☆

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする