文理両道

専門は電気工学。経営学、経済学、内部監査等にも詳しい。
90以上の資格試験に合格。
執筆依頼、献本等歓迎。

ワイブル分布の積分

2016-01-03 13:04:23 | 電気・電子工学
 風力発電に関する本を読んでいると、風速の度数分布はワイブル分布で表されることが多いと書いてあった。ワイブル分布とは、品質管理などでも使われる分布関数である。

 風速の度数分布の確率密度関数f(V)と、風速がVa以下の確率F(Va)はそれぞれ以下のようにあらわされる。

 f(V)=(k/c)(V/c)^(k-1)exp〔-(V/c)^k〕(V:風速、k:形状係数、c:尺度係数)

 F(Va)=1-exp〔-(Va/c)^k〕

 f(V)からF(Va)を導出する過程は書いてないが、これはf(V)を0~Vaまで積分すればよいはず。理工書を読むのに一番大切なのは数式を理解するということだ。出てきた数式は、自分の手で追ってみる。これが理工書を読みこなす秘訣である。やってみるとミスプリが見つかったりして意外と楽しい。

 導出過程の書いてあるものはもちろんのこと、導出過程が省略されているものについても自分でその行間を埋めていくとよい。そうやって初めて理工書に書いてあることが理解できるようになるのだ。

 最初は生真面目に部分積分法などを使ってやってみたが、私は計算自体はあまり得意でないので、どんどん泥沼に落ち込んでいく(笑)。

 ここでふと気が付いたのは、(V/c)の形。係数のほうは(k-1)乗、exp関数の中はk乗という形になっている。

 ここで次の積分を考える。

 ∫x^(k-1)exp(-x^k)dx

 今、t=-x^k と変数変換すると、dt=-kx^(k-1)dx

 ∴ 与式=-(1/k)∫exp(t)dt=-(1/k)exp(t) 

 変数を元に戻すと、与式=-(1/k)exp(-x^k) ・・・(1)

 となり、この式は簡単に積分できることが分かる。

 そこで最初のf(V)とF(Va)の式に戻る。f(V)の積分においては、(1)においてx=V/cとおいて0~Vaまで積分するとF(Va)が簡単に導出できる。

 関数の形は複雑だが、それに惑わされないで自分の手で計算して確かめてほしい。それにしてもブログって数式を表すときになんとも不便だなあ。

 またワイブル分布において、k=2の場合はレイリー分布と呼ばれ、こちらも風速の度数分布を表すのに使われるようだ。

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4 コメント

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LaTex (釈迦に説法かも?)
2016-01-03 19:37:27
gooブログはLaTexは使えないですか。
たぶん設定とかで使えるように出来ると思いますが、
「LaTex ブログ」で検索してみるといろいろ出てきます。

参考:
http://auewe.hatenablog.com/entry/2014/05/10/050403

http://www002.upp.so-net.ne.jp/latex/
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Re:LaTexさん (風竜胆)
2016-01-03 20:01:24
ありがとうございます。 ちょっと調べてみるとどうも使えそうですね。今はあまり時間がないので、あらためてじっくり調べてみたいと思います。
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マルテンサイト千年 (サムライグローバル)
2024-08-02 20:09:35
最近はChatGPTや生成AI等で人工知能の普及がアルゴリズム革命の衝撃といってブームとなっていますよね。ニュートンやアインシュタイン物理学のような理論駆動型を打ち壊して、データ駆動型の世界を切り開いているという。当然ながらこのアルゴリズム人間の思考を模擬するのだがら、当然哲学にも影響を与えるし、中国の文化大革命のようなイデオロギーにも影響を及ぼす。さらにはこの人工知能にはブラックボックス問題という数学的に分解してもなぜそうなったのか分からないという問題が存在している。そんな中、単純な問題であれば分解できるとした「材料物理数学再武装」というものが以前より脚光を浴びてきた。これは非線形関数の造形方法とはどういうことかという問題を大局的にとらえ、たとえば経済学で主張されている国富論の神の見えざる手というものが2つの関数の結合を行う行為で、関数接合論と呼ばれ、それの高次的状態がニューラルネットワークをはじめとするAI研究の最前線につながっているとするものだ。この関数接合論は経営学ではKPI競合モデルとも呼ばれ、様々な分野へその思想が波及してきている。この新たな科学哲学の胎動は「哲学」だけあってあらゆるものの根本を揺さぶり始めている。こういうのは従来の科学技術の一神教的観点でなく日本らしさとも呼べるような多神教的発想と考えられる。
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社会実装成功例(市場原理) (鉄の道)
2024-08-14 16:58:17
「材料物理数学再武装」といえばプロテリアル(旧日立金属)製高性能冷間ダイス鋼SLD-MAGICの発明者の方の大学の講義資料の名称ですね。番外編の経済学の国富論における、価格決定メカニズムの話面白かった。学校卒業して以来ようやく微積分のありがたさに気づくことができたのはこのあたりの情報収集によるものだ。ようはトレードオフ関係にある比例と反比例の曲線を関数接合論で繋げて、微分してゼロなところが最高峰なので全体最適だとする話だった。同氏はマテリアルズ・インフォマティクスにも造詣が深く、AIテクノロジーに対する数学的な基礎を学ぶ上で貴重な情報だと思います。
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