小雨、26度、90%
地図が挿絵にある本はいくらでもあります。地図自体が好きですが、本の表表紙を開けるとそこに見開きの地図がある本があります。実際の地図のこともあれば、架空の地図のこともあります。架空の地図の場合は手書きの地図だったりします。
本を手にとって厚い表紙を開けると目に飛び込んでくる地図は、今から始まるお話の入り口です。この表紙裏の地図に初めて出くわしたのは、おそらく「クマのプーさん」の本です。ですから、もうかれこれ50年前の話です。岩波書店の愛蔵版は当時は箱に入っていました。箱から出して表紙を開けると、そこには作者ミルンが描いたプーが住む森の地図がありました。この「クマのプーさん」に始まって、C.Sルイスの「ナルニア国シリーズ」、アーサーランサムの「アマゾン号とツバメ号」シリーズもそれぞれのお話の地図が表表紙を開けるとありました。子どもの頃読んだこれらの本の地図はみんな架空の地図です。今気付いたのですがこれらみんなイギリスの作家の本です。お話の途中で幾度も地図を見返します。プーさんが歩いた森の道、イギリスの湖沼地帯のどこにつばめ号はいるのかとか、表紙裏の地図は私の想像力を視覚に残る形で刺激してくれました。
昨日、香港は大型の台風の接近で朝からシグナル8という交通機関もすっかり止まる状態でした。学校も会社もお休みです。主人はずっと家で仕事をしています。曇天の日は刺繍の麻の目が見辛いので、先日届いた本を読むことにしました。いつものように本を持ってソファーにひっくり返ります。もちろんモモさんは私の脇腹で寝ています。
ハードカバーで頼んだのでもっと大きいものが来ると思っていたのに、届いた本は私の手のひらより一回り大きなサイズです。珍しい大きさです。刺繍が終わるまでお預けと本棚に入れました。本は読む間、紙のカバーは外します。さて、本の表紙を開くと、久しぶりの地図に出くわしました。実際の地図ですが、1870年のアメリカテキサス州の地図です。フィクッションを読むときでも、実際の話、例えばヒラリークリントンの自伝を読むときなども日本のことですら地図が欲しいと思います。数年前までは、読みさしの本と英語の辞書と地図は三身一体でした。辞書と地図がスマホに置き換わりその変わり眼鏡が必要になりました。地図を見ると想像力が高まるのはどうも子供の頃からです。
しばらくこのテキサス州の地図を読みました。知らない地名ばかりです。メキシコと地続き、きっと暑い気候だと思います。こうして本文に入る前に頭の準備も出来上がります。
外は大嵐、お腹の上ではモモさんがスヤスヤ。でも主人がいると本に集中できません。やれコーヒーだ、お昼ご飯だ。その度に本を置きます。気がつくと本の小口、パラパラめくるところがギザギザのカットになっています。 アンカットという製本です。昔ペーパーナイフでページを切りながら読んでいた本の名残です。いい紙の手触りです。
1870年、テキサス州のお話の始まりです。