チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

「Different Class」Joanne Harris

2016年10月12日 | 

雨、23度、88% 

 イギリスの女流作家、ジョアンハリスは日本では「ショコラ」で知られた作家です。作品よりもジョニーデップとジュリエットビノッシュの映画「ショコラ」の方が有名です。私が彼女の作品を読み始めたのもこの映画がきっかけです。以来、新刊は欠かさず読んでいます。小説としては19冊目に当たるのが「Different Class」です。

 ジョアンハリスの小説には幾つかのジャンルがあります。初期のフードシリーズ、「ショコラ」の主人公ヴィアンヌを扱ったもの、北欧神話を題材にしたものそして心理サイコっぽい話のシリーズに分けられます。この「Diferrent Class」はややサイコがかった話で、10作目の「Gentleman and Players」と同じ舞台、同じ主人公が登場します。

 舞台は500年の歴史を持つグラマースクール「セントオズワルド」そして、この学校を愛して止まないラテン語の教師ストレートリーです。ストレートリー自身もこの学校の卒業生、そして自身の教え子がこのセントオズワルドの学長となってやって来るところから話は始まります。今の時代、ラテン語を学んでも何の仕事にも繋がらない、それよりはIT技術を教えた方が生徒が集まるという新学長の考えです。24年前に起こった殺人事件とからめながら話は1981年と2005年を行きつ戻りつしながら進みます。元々は男子校のセントオズワルド、教師と生徒との間のホモセクシュアルな関係やそれをブラックメールのネタにする話が入り組みます。

 ジョアンハリスのこの手の小説「BLUE EYE BOY」でもそうでしたが、一体誰が裏で何をしているのか全く手探り状態で読み始めると、だんだんと一人の人間に焦点が合わさって行きます。頭の中ではその焦点の当たった一人を追いかけているのですが、話の四分の三を過ぎた頃、ガツンと焦点を当てられた人間以外の人が登場して来ます。そこで、「あー、またやられた。」と私は思います。独白で書き進められている話の場合、誰の独白か、つまり1人称が誰なのかが読み手の想像に委ねられるという心理的トリックです。このやられたと思うその瞬間、ますます話は面白く展開し始めます。

 「Diferrent Class」様々な話が絡み合っていますが、殺人あり裏切りありの話にもかかわらず、ジョアンハリスらしい爽やかさが残る締めくくりでした。私には一人の作家を置い続ける癖があります。ジョアンハリスはその話の展開の素晴らしさもありますが女性的な一面がなんとも清々しい作家です。日本で翻訳されているのは残念なことにたったの四冊です。イギリス国籍でありながらフランス人でもありイギリス人でもあるジョアンハリスです。さて、「Different Class」翻訳の題名にする時はなんとなるかしら?と考えます。あの重たい石造建築のの歴史のあるイギリス、重く垂れ込めた雲、今だにどの階級の出身かが言葉ひとつで分かるというお国柄。思いめぐらすうちに、やっぱり翻訳は出ないだろうなあと思います。私より少しお若いジョアンハリス、次の新刊が楽しみです。

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