大雨、12度、90%
奈良東大寺のお水取りの季節になると毎年いただくお菓子があります。「のりこぼし」という名前の椿を象った和菓子です。ハッと目を引くその色合い、姿の可愛さは殊更です。
「今年はコロナウィルスのせいでお送りできません。」とご連絡いただいたのは先月でした。「来年の楽しみにしますね。」とお返事したのに、律儀にもわざわざ奈良まで出向いて送ってくださいました。箱を開けて「のりこぼし」の姿を見た途端に顔がほころんだのは言うまでもありません。
紅白の花弁に包まれた中の餡は優しい黄身あんです。口に含むと私の何をくすぐるのか子供の頃に食べた何かを思い起こさせます。「何だろう?」毎年同じことの繰り返し、そのうち忘れてしまいますが、「のりこぼし」が呼び起こす小さい時の食べ物の正体は今年もわかりません。
「のりこぼし」の赤の色は日本家屋の薄暗さの中でひときわ目に入ります。茶室の採光を考えれば頷ける赤の色です。今年も一服立てました。 お茶は今年の干支の「子昔」です。
繁華街も人が少なく、スーパーに行っても棚に何もない様子が世界的に広がっているようです。どこかに不安な気持ちを抱えています。そんな時、ほんの数分気持ちが和むお茶の時間です。