夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『人生、ブラボー!』

2013年02月16日 | 映画(さ行)
『人生、ブラボー!』(原題:Starbuck)
監督:ケン・スコット
出演:パトリック・ユアール,アントワーヌ・ベルトラン,ジュリー・ルブレトン他

大阪ステーションシティシネマからシネ・リーブル梅田へてくてく。

予告編を観てフランスの作品だと思っていたら、
カナダ、ケベック州の作品でした。
前述の『さよならドビュッシー』が今年のワーストくさかったため、
テンション低めで観に行きましたが、これは◎。

42歳の独身男ダヴィッドは、だらしないことこのうえない。
父親の精肉店で配達係を務めるも、遅刻の常習犯。
同じく店に勤務する二人の兄は立派な仕事ぶりだというのに。

職場でもそうならば、私生活もボロボロ。
借金は膨れあがって8万ドルに。取り立てに追われているが金はない。
金稼ぎに大麻を育てようとするが失敗。
恋人のヴァレリーからは妊娠を打ち明けられて呆然。
その顔を見てヴァレリーに愛想を尽かされてしまう。

そんな折り、帰宅すると弁護士を名乗る男が。
若かりし頃、マスをかいて金がもらえるならばと精子提供した数、655回。
とても優秀な種馬だったらしく、533人もの子どもがこの世に誕生。
そのうちの142人が父親は誰かを知る権利があるとして、
身元の開示を求める集団訴訟を起こしたと言うのだ。

身元を明かすなんて恥さらしもいいところ、滅相もない。
親友の弁護士に泣きついたところ、おもしろがって話に乗ってくれることに。

親友から渡された142人の原告団のプロフィールが記載されたリスト。
見ないつもりが好奇心に負けて1枚だけチラ見。
それがダヴィッドが応援するサッカーチームの花形選手だったものだから、
狂喜したダヴィッドは親友を連れてスタジアムへ。

以後、1枚ずつめくってみるが、誰も彼も気になって仕方がない。
路上ミュージシャンならばそれを聴きに、
コーヒーショップの店員ならばコーヒーを飲みに、
観光地のガイド役ならば客に、プールの監視員ならば泳ぎにと、
もちろん父親であるとは言わずに次々と会いに行ってしまい……。

みんなが恵まれた暮らしを送っているわけではありません。
脳性麻痺で車椅子生活をしていたり、ヤク中だったり。
ゲイもいれば、ヴィジュアル系のいじめられっ子もいます。
でも、誰も彼もが愛おしい。そんなダヴィッドに声援を送りたくなります。

マスコミに取り上げられると当然ながら変態扱いされますが、
名乗り出ることを躊躇するダヴィッドに対して、子どもたちはこう言います。
「僕らは変態だなんて思っちゃいない。
 幸せと生を与えてくれた父親に感謝したいだけなんだ」。

不出来の息子に呆れていると思いきや、ダヴィッドの父親がまた泣かせます。
「おまえはどんな事態も丸く収める力を持っている奴なんだぞ」と。
この父親とダヴィッドのやりとりにはボロ泣き。

ただの変態でこれだけの精子提供を完遂したわけではありません。
彼がこのお金を何に使ったか、それはぜひご覧を。

なお、原題は精子提供のさいに彼が使ったとされる偽名“Starbuck”。
世界中に20万頭以上の子どもがいる、カナダの超優良種牛の名前に由来するのだそうです。

自分の人生、決断するのはほかの誰でもない、俺自身。

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