『みなさん、さようなら』
監督:中村義洋
出演:濱田岳,倉科カナ,永山絢斗,波瑠,安藤玉恵,志保,
ナオミ・オルテガ,田中圭,ベンガル,大塚寧々他
前述の『塀の中のジュリアス・シーザー』とハシゴ。
シネ・リーブル梅田で作った「TCGメンバーズカード」を片手にテアトル梅田へ。
はい、もう一度申し込んだりはしていません。(^o^)
近頃、団地の話がブームなのでしょうか。
本作、それから5月に公開予定のクドカン監督、草彅くん主演の『中学生円山』。
先日DVDで観てめっぽう面白かった『アタック・ザ・ブロック』(2011)は、
異星人に団地(=ブロック)が襲撃される話でした。
手元には原武史・重松清共著の『団地の時代』という本もあります。
同名の原作を3分の1ほど読んでから観ました。
全部読んでから観たかったのですが、
結果的には読めずに観たせいかおかげか衝撃度がグンと上向きに。
単に団地の中だけで生きていくと決めた少年の話かと思いきや、
そこには隠された悲しい理由がありました。
1981年の春、芙六小学校を卒業した107人は、全員団地暮らし。
そのうちの一人、度会悟は突然、「一生、団地の中だけで生きてゆく」と決める。
中学で担任となった横田先生がなんとか登校させようとやってくるが、
読み書き計算、生きていくのに必要な力はすべて家で身につけられる、
中学にかようなんて時間の無駄だと悟は断言。
そんな悟の意見を尊重し、生き方を悟にまかせる母親の日奈。
団地にこもって規則正しい生活を続ける悟。
朝の乾布摩擦にはじまり、体力づくりに読書にと徹底したスケジュールをこなす。
芙六小学校の同期卒業生全員の安否確認をしなければ気が済まず、
チェックシートを携えての毎晩定刻の団地内パトロールも欠かさない。
しかし、卒業生は毎年少しずつ団地から出て行って……。
途中まではバカバカしい話だと笑える雰囲気で、明るく進みます。
予告編で惹かれた横田先生役の安藤玉恵は、
「団地団地って」と言うだけのチョイ役ながら存在感ばっちり。
団地内だけで本当に生きてゆけるのかという懸念など物ともせず、
団地内のケーキ屋“タイジロンヌ”で就職まで決めてしまう悟。
団地にはないものが欲しいときだって、買い物を人に頼めばいいわけで。
悲しい話が裏にあるとは予想だにしていなかったため、青天の霹靂でした。
出たいのに出られない。でも出るときってこんなもの。
何があっても守りたい人がいれば、守らなければならない約束があれば、
その一歩は踏み出せるものなのかなぁ。
カナダ/フランス作品に同タイトルの『みなさん、さようなら』(2003)がありました。
観る前は同じタイトルでも全然ちがう中身だと思っていたのに、
観終わってみたら、全然ちがうにもかかわらず、同様の感慨が。
原作では“タイジロンヌ”の師匠はかなりお洒落な男前、
その師匠に「わりとイケてる」と言われる悟も当然男前。
両者とも(師匠役は映画ではベンガル)、イメージ的にはずいぶん違和感がありますが、
12歳から30歳までをノーメークで演じられる役者なんて
濱田岳くんぐらいでしょうから致し方なし!?
ケーキが売れ残らないようにつくる営業努力については
原作も映画も非常に興味深かったです。
原作のほうがより詳細で思わず唸りましたので、ぜひご一読を。