夜な夜なシネマ

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『父のこころ』

2016年07月02日 | 映画(た行)
『父のこころ』
監督:谷口正晃
出演:大塚まさじ,日永貴子,古賀勇希,上西愛理,福本清三他

初の立誠シネマプロジェクトで4本ハシゴの2本目。
監督は京都生まれ。京都を拠点に映画製作や配給をおこなう谷口正晃
撮影監督は『ごめん』(2002)、『ぐるりのこと。』(2008)、『ひゃくはち』(2008)、
『つむじ風食堂の夜』(2009)、『時をかける少女』(2010)、『恋人たち』(2015)と、
私のお気に入り作品だらけの上野彰吾。

本作は元・立誠小学校とその周辺が舞台となっていて、
今まさに鑑賞しているココで撮影されたのだと思うとテンションが上がります。
それを抜きにしても非常に良い作品でした。

奥村家の主・賢一(大塚まさじ)は多額の借金を残して9年前に蒸発。
妻・葉子(日永貴子)に泣いているひまはなく、
長男・宏志(古賀勇希)と長女・恵美(上西愛理)を美容師をしながら育て上げた。
宏志は住宅リフォーム会社の営業社員、恵美は結婚が決まり、葉子もひと安心。

ある日、宏志は友人から連絡を受ける。
用事があって立誠小学校を訪れた友人が、賢一そっくりの男性を見かけたというのだ。
慌てて宏志が駆けつけると賢一らしき男の姿はすでになし。
賢一から話しかけられていた用務員(福本清三)をつかまえて事情を聞くと、
廊下に貼り出されている昔の卒業写真に映る女性について尋ねられたらしい。

その女性の実家を訪ねてみると、賢一が住人から罵声を浴びせられていた。
賢一が出てくるのを待って声をかけると、
成長した宏志の姿に驚きつつ、ぽつぽつと事情を話しはじめる。
9年前のいちばん辛かった時期、大変お世話になったのがその女性。
彼女が亡くなったので、遺骨を引き取ってもらうべく実家を訪ねたのだと。

宏志が恵美に連絡すると、自分の結納に賢一にも出席してほしいと恵美は言う。
恵美の頼みは聞きたいが、葉子が何と言うだろうか。
まずは葉子に会って了承を得なければと、
奥村一家は久しぶりに4人そろって顔を合わせるのだが……。

9年経って京都へ帰ってきたというのに、
それは家族に会うためではなく、家族の誰も面識のない女性のため。
息子、娘、妻の複雑な心の内が丁寧に描かれています。

夫と妻は所詮他人。けれど子どもにとって、親はいつまで経っても親。
自分がどうすべきかわからない、でもこうすると決めた夫、父親に対し、
妻の肝の据わりかたに感じ入り、息子の言葉に涙があふれました。

とてもとてもいい作品でした。

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