夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『シング・ストリート 未来へのうた』

2016年07月19日 | 映画(さ行)
『シング・ストリート 未来へのうた』(原題:Sing Street)
監督:ジョン・カーニー
出演:フェルディア・ウォルシュ=ピーロ,ルーシー・ボーイントン,マリア・ドイル・ケネディ,
   エイダン・ギレン,ジャック・レイナー,ケリー・ソーントン,ベン・キャロラン他

梅田ブルク7で『森山中教習所』『葛城事件』を観て、
シネ・リーブル梅田で『フィレンツェ,メディチ家の至宝 ウフィツィ美術館 3D/4K』を観て居眠り、
どうしても観たかった本作でこの日のハシゴを〆。

アイルランド出身のジョン・カーニー監督。
『ONCE ダブリンの街角で』(2006)、『はじまりのうた』(2013)、どちらも大好きでした。
カーニー監督と音楽は切っても切り離せないらしく、本作もやはり「音楽×映画」
監督自身の少年時代の体験が基となっているそうです。

1985年、不況の真っ只中にあるアイルランドの首都ダブリン
14歳の少年コナーは、父親が失業した煽りを受け、
上品な私立学校から荒れ気味の公立学校“Synge Street”への転校を余儀なくされる。

父親の仕事はなかなか見つからず、パート勤務の母親は上司と不倫。
そのせいで両親は喧嘩が絶えず、家庭は崩壊状態。
学校に行けば途端にいじめっ子バリーから目をつけられ、
学校長のバクスターからも、靴について難癖をつけられる始末。

そんな彼にとって、唯一の楽しみはミュージックビデオ番組を観ること。
音楽オタクの兄ブレンダンと並んでテレビの前に座れば、
ブレンダンがあれやこれやとミュージシャンについて解説してくれる。
目下のコナーのお気に入りはデュラン・デュラン

ある日、いじめのかわし方について伝授してくれるというダーレンと話している途中、
視界に入った自称モデルの1歳上の美少女ラフィーナに一目惚れ。
つい「僕のバンドのビデオを制作するから出演してほしい」と言ってしまう。

嘘にはしたくないから、本当にバンドを結成。
ダーレンをマネージャーに据えることにして、
楽器なら何でもござれのエイモンにまずは声をかけて、ギターを頼む。
黒人がいるほうがハクがつくからとキーボードにンギグをスカウト。
学校の掲示板でメンバーを募ると、ドラムとべースもあっさり決まる。

即席バンドの名前は学校の名前とかけて“Sing Street”に決定。
安直にカバー曲で行こうと思っていたところをブレンダンに駄目だしされ、
コナーとエイモンはオリジナル曲作りに取りかかる。
曲が完成した後はビデオ撮影に向けて猛特訓を開始するのだが……。

かかる曲は80年代尽くし。
デュラン・デュランはもちろんのこと、モーターヘッド、ザ・キュアー、
ホール&オーツ、ジョー・ジャクソンなどなど。
笑ったのはライバル出現に凹むコナーへのブレンダンの台詞。
コナーよりもずっと年上の大人の男で、オープンカーに乗り、音楽をかけていたと言うコナーに、
ブレンダンが「そいつは何を聴いていたのか」と問います。
「ジェネシスだった」とコナーが答えると、ブレンダンは「安心しろ、そいつは敵じゃない」。
ブレンダン曰く、「フィル・コリンズを聴く男に惚れる女はいない」のだそうです(笑)。

この兄ブレンダンの泣かせること。
自分は地元に残って妹の幸せだけを願う『ブルックリン』の姉と、この兄は同じ。
「すべての兄弟に捧ぐ」という献辞にジワ~ン。

ダブリンからロンドンへ渡るのが若者たちの夢だった時代。
今はその逆なのだと思うと複雑な思いが胸をよぎりますが、
きっと夢は叶う、そう信じたくなる作品です。

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