『葛城事件』
監督:赤堀雅秋
出演:三浦友和,南果歩,新井浩文,若葉竜也,田中麗奈,内田慈他
梅田ブルク7にて。
前述の『森山中教習所』の後に観ました。打って変わって重苦しい。
赤堀雅秋監督はもともとは劇作家。
映画監督デビュー作品の『その夜の侍』(2012)も、もとは舞台劇。
本作は2001(平成13)年の大阪教育大附属池田小事件をモチーフにした同名舞台劇に、
その後に起きた土浦、秋葉原、池袋などの通り魔事件といった、
いくつもの無差別殺傷事件の要素を加えて映画化した作品です。
東京の郊外で親から引き継いだ金物屋を営む葛城清(三浦友和)。
妻の伸子(南果歩)、長男の保(新井浩文)、次男の稔(若葉竜也)と4人暮らし。
まだ息子たちが幼かった頃に念願のマイホームを建て、
誰もが理想的とする家庭を築いてきたはずだった。
しかし、家族に有無を言わさず、抑圧的に支配してきた清のもと、
どこかひずみが生まれていたことに当の本人は気づかない。
文句はいっさい言わずに耐え忍んできた伸子。
成績優秀で従順だった保は、結婚して子どもにも恵まれるが、
勤務先をリストラされたことを実家にも妻(内田慈)にも言い出せない。
保とちがって出来の悪い稔は何事も長続きせず、
ひきこもって人生の「一発逆転」を夢見ている。
ある日、伸子の不満が爆発して……。
無差別殺傷事件を起こすのは稔で、死刑判決を受けるシーンから始まります。
死刑が宣告されたときの稔の微笑みがなんとも不気味。
そして、彼と獄中結婚をする死刑廃止論者の順子(田中麗奈)が怖い。
本作は犯人である稔ではなく、その父親の清を中心に描かれます。
平和に見える家庭が実はそうではない。
家庭内暴力が常在するわけでも借金で首が回らなくなるわけでもないのに、
なぜかどんどん歯車が狂いはじめてゆく様子。
登場人物にひとりとしてまともな人はいません。
なかでも一見まともな順子の偽善的な態度には虫酸が走るほど。
伸子にしても、おかしくなったのは清と結婚したからなのかどうなのか。
唯一の幸せがかいま見えるのは、家を飛び出した伸子の行方を捜し当て、
伸子と保と稔が3人で語らうシーンのみ。
そのシーンにしても、異常な家庭を見せられた後では空恐ろしい。
三浦友和の演技が圧巻です。
これまでの彼のイメージをくつがえす、傲慢で思いやりのかけらもない父親役。
相当な勇気が要ったと思いますが、凄い俳優だと改めて認識。
幸せはいとも簡単に崩れる。
いつから、どうして、こんな家庭になってしまったのか。
誰にでも起こらないとはいえない光景を突きつけられるようです。
監督:赤堀雅秋
出演:三浦友和,南果歩,新井浩文,若葉竜也,田中麗奈,内田慈他
梅田ブルク7にて。
前述の『森山中教習所』の後に観ました。打って変わって重苦しい。
赤堀雅秋監督はもともとは劇作家。
映画監督デビュー作品の『その夜の侍』(2012)も、もとは舞台劇。
本作は2001(平成13)年の大阪教育大附属池田小事件をモチーフにした同名舞台劇に、
その後に起きた土浦、秋葉原、池袋などの通り魔事件といった、
いくつもの無差別殺傷事件の要素を加えて映画化した作品です。
東京の郊外で親から引き継いだ金物屋を営む葛城清(三浦友和)。
妻の伸子(南果歩)、長男の保(新井浩文)、次男の稔(若葉竜也)と4人暮らし。
まだ息子たちが幼かった頃に念願のマイホームを建て、
誰もが理想的とする家庭を築いてきたはずだった。
しかし、家族に有無を言わさず、抑圧的に支配してきた清のもと、
どこかひずみが生まれていたことに当の本人は気づかない。
文句はいっさい言わずに耐え忍んできた伸子。
成績優秀で従順だった保は、結婚して子どもにも恵まれるが、
勤務先をリストラされたことを実家にも妻(内田慈)にも言い出せない。
保とちがって出来の悪い稔は何事も長続きせず、
ひきこもって人生の「一発逆転」を夢見ている。
ある日、伸子の不満が爆発して……。
無差別殺傷事件を起こすのは稔で、死刑判決を受けるシーンから始まります。
死刑が宣告されたときの稔の微笑みがなんとも不気味。
そして、彼と獄中結婚をする死刑廃止論者の順子(田中麗奈)が怖い。
本作は犯人である稔ではなく、その父親の清を中心に描かれます。
平和に見える家庭が実はそうではない。
家庭内暴力が常在するわけでも借金で首が回らなくなるわけでもないのに、
なぜかどんどん歯車が狂いはじめてゆく様子。
登場人物にひとりとしてまともな人はいません。
なかでも一見まともな順子の偽善的な態度には虫酸が走るほど。
伸子にしても、おかしくなったのは清と結婚したからなのかどうなのか。
唯一の幸せがかいま見えるのは、家を飛び出した伸子の行方を捜し当て、
伸子と保と稔が3人で語らうシーンのみ。
そのシーンにしても、異常な家庭を見せられた後では空恐ろしい。
三浦友和の演技が圧巻です。
これまでの彼のイメージをくつがえす、傲慢で思いやりのかけらもない父親役。
相当な勇気が要ったと思いますが、凄い俳優だと改めて認識。
幸せはいとも簡単に崩れる。
いつから、どうして、こんな家庭になってしまったのか。
誰にでも起こらないとはいえない光景を突きつけられるようです。