夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『日本で一番悪い奴ら』

2016年07月25日 | 映画(な行)
『日本で一番悪い奴ら』
監督:白石和彌
出演:綾野剛,YOUNG DAIS,植野行雄,矢吹春奈,瀧内公美,田中隆三,
   斎藤歩,青木崇高,木下隆行,音尾琢真,ピエール瀧,中村獅童他

海の日、某国家資格の試験を受けるダンナを会場まで送り、
そのまま最寄りの駅に車を駐めて大阪市内へ出て映画を観るつもりが、
受験者の中には車でやってきた人も多いようで、
普段はガラガラの周辺コインパーキングがどこもいっぱい。
こうなることも予測はしていたので、ひとつ隣の駅付近まで移動。
今度こそガラガラのコインパーキングに駐車してJRで大阪へ。
大阪ステーションシティシネマへと走りました。

『凶悪』(2013)の白石和彌監督であるうえに、主演は綾野剛
封切り後すぐにでも観たかったのに、終映間際になっても機会なし。
前週は西宮まで車を飛ばしたのに間に合わず、
この日もぎりぎりアウトかと思われましたが、
朝イチ9:30の回の予告編終了まであと1分というところで滑り込み。
間に合わなかったら十三で『あまくない砂糖の話』を観るつもりでした。
それもあきらめきれなかった作品なので、
結局間に合ったことが吉と出るか凶と出るかドキドキしながら鑑賞。

大学時代に柔道で鍛えた諸星(綾野剛)は、その実力を買われて北海道警察入り。
ほどなくして新米刑事として機動捜査隊に配属される。
真面目なだけが取り柄の諸星は、現場ではまったくの役立たず。
コンビを組む先輩刑事の栗林(青木崇高)が犯人を追い詰めても諸星がポカ。
目の前でベテラン刑事の村井(ピエール瀧)に手柄をかすめ取られてしまう。

諸星を叱る栗林に村井が言う。
「俺はずっと前から犯人に目星をつけていた。お前とは情報量がちがう。
後輩を叱る前に、自分の情報の少なさをなんとかしろ」。

しかし栗林の諸星に対する態度は変わらない。
ある日の事件発生時にもひとり出動を許されず留守番をしていた諸星に
村井が「飯でも食いに行くか」と声をかける。

ホステスの姉ちゃんをはべらせて好き放題の村井から、
刑事は点数を稼いでなんぼのものだと説かれ、
そのためにとにかくスパイをつくって情報を集めろと助言された諸星は、
翌日からすすきの一帯に自らの名刺をばらまくという手段に出る。
柔道の道内チャンピオンだった諸星は、チンピラと喧嘩になっても負け知らず。
腕に物を言わせればスパイをつくるのもわりと簡単。
おかげで覚醒剤や拳銃所持を次々と摘発し、エースと崇められる存在になるのだが……。

実在の元警部・稲葉圭昭の告白本『恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白』が基。
数々の違法捜査に関わり、覚醒剤の密売に手を染めるにとどまらず、
ついには自分も覚醒剤を常用するようになって逮捕されたという凄い話。
日本警察史上最悪の不祥事だと言われているそうです。

今も進行中である本件について、実にコミカルに描いています。
金を持てば女が寄ってくる。悪い仲間も増える。
どんどん破滅の道へと進んでいるのに、本人はそのことに気づかない。
生来の真面目さはどこへ行ってしまったんだと思うけれど、
意外にも最後にその真面目さは残っていたのだということがわかります。
人を信じて裏切られ、それでもまだ信じようとするバカ。
その魅力を綾野剛が最大限に演じきっていました。

美人ホステス役の矢吹春奈と綾野剛の濡れ場もばっちり。
諸星と親しくなる暴力団の組長に中村獅童
諸星を家族のように慕う「ロシア語を話せるチンピラ」にYOUNG DAIS
盗難車をロシアに横流しするパキスタン人にお笑いコンビ“デニス”の植野行雄。
みんなよい味を出しています。

はい、これを劇場で観られてよかったです。
白石和彌監督、好きかも。

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