夜な夜なシネマ

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『疑惑のチャンピオン』

2016年07月10日 | 映画(か行)
『疑惑のチャンピオン』(原題:The Program)
監督:スティーヴン・フリアーズ
出演:ベン・フォスター,クリス・オダウド,ギヨーム・カネ,ジェシー・プレモンス,
   リー・ペイス,ドゥニ・メノーシェ,ダスティン・ホフマン他

先週の日曜日、シネ・リーブル梅田で2本ハシゴの1本目。
5月に大当たりの4本ハシゴをして以来のリーブルです。

前人未踏の7連覇を成し遂げたアメリカ人アスリートのランス・アームストロング。
長年ドーピングを疑われながらも検査結果はシロ。
彼に疑惑の目を向けた新聞社や保険会社は名誉毀損で賠償させられましたが、
引退してからドーピング違反が判明、全タイトル剥奪。
本作は彼のドーピング疑惑を追い続けたジャーナリストのノンフィクションが基。
監督はスティーヴン・フリアーズ、結構お気に入りの監督です。

1971年、テキサス州に生まれたランス。
高い身体能力を持ち、10代からトライアスリートとして活躍する。
自転車競技に専念すると、1991年にアマチュアサイクリストとして全米チャンピオンに。
1992年にプロに転向、翌年にも全米チャンピオンとなり、
世界最高峰の“ツール・ド・フランス”へと舞台を移す。

彼を取材したジャーナリストのデヴィッド・ウォルシュは、
自信に満ちた受け答えと明るく話すランスに好印象を持つが、
ここで勝てるほどの力はないと記者仲間に言い切る。
はたしてデヴィッドの見立てどおり、区間によっては快走を見せるが優勝には至らない。

どうしても勝ちたいランスは、イタリア人医師ミケーレ・フェラーリを訪ねる。
ミケーレは乳酸性閾値や無酸素性作業閾値の大家であるとともに、
自らの研究のためには選手へのドーピングも厭わないと噂される医師。
ランスの肉体を見たミケーレは、どうにかしてやるには筋肉がつきすぎだと言う。

仕方なく立ち去ったランスは、チームメイトたちとスイスへ。
スイスでは運動能力向上剤であるエポを普通に買うことができるのだ。
エポのおかげでランスの成績は飛躍的な伸びを見せる。

そんな矢先、ランスは精巣癌に冒される。
脳にまで転移していたため、切除の大手術を受けたのちリハビリ。
レース復帰を切望するランスは再びミケーレのもとを訪れ、
癌のおかげでドーピングに最適となった肉体を披露する。

その後は連勝街道をまっしぐら。
癌から奇跡の復活を果たしたランスを世界中が英雄視する。
同じ病と闘う人々の光になりたいとランスは繰り返すのだが……。

ベン・フォスター演じるランスは、本作中ではかなり嫌な奴。
基金を設立して癌患者に寄付をするのは美談ではあるけれど、
どこまでそのつもりだったのかは不明です。
なにしろ自分の宿泊先は豪華ホテルのスイートルーム、チームメイトは車中泊。
そしてチームメイトにもドーピングを強い、
ひたすら自分を勝たせるために邁進しろという態度。

嫌な奴が主人公だから嫌な作品なのですが、
ほぼ事実ということであれば何から何まで面白い。
美談はこんなふうにできあがるということ。
そして英雄視されている人を貶めることは許されない雰囲気。
ドーピングしているとわかっていながら、
金を稼がせてくれる英雄の言いなりになるチームや組織。
ドーピング検査で真っ黒だった結果まで白だと言わせてしまうのですから。

ランスの伝記映画で誰がランス役をやるのかという話になったとき、
マット・デイモンのはずだったけどジェイク・ギレンホールになった。
ギレンホールは『ドニー・ダーコ』(2001)で自転車に乗っていたし、
ほかにもね」という会話が皮肉っぽくて苦笑。
ジェイク・ギレンホールは突然の肉体改造にドーピングが疑われていましたからね。

ランス・アームストロングの名前すら知らなかった私は、
ツール・ド・フランスやドーピングに俄然興味が湧きました。
彼はまだ40代、存命なのだと思うと複雑。
楽しい作品ではないけれど、非常に気になる作品です。

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