夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『裸足の季節』

2016年07月28日 | 映画(は行)
『裸足の季節』(原題:Mustang)
監督:デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン
出演:ギュネシ・シェンソイ,ドア・ドゥウシル,トゥーバ・スングルオウル,エリット・イシジャン,
   イライダ・アクドアン,ニハール・G・コルダシュ,アイベルク・ペキジャン他

土曜日の朝、1本だけ観る時間ができたので、テアトル梅田へ。

『裸足の季節』と聞くと、どうしても思い浮かぶのは松田聖子のデビュー曲。
“えくぼ~の~♪”が頭の中を巡ってしかたありませんが、
これはそんな曲も吹っ飛ぶフランス/トルコ/ドイツ作品。
トルコ出身の新人女性監督の長編デビュー作なのだそうです。
登場する5人姉妹は揃いもそろって皆めちゃ綺麗、可愛い。

イスタンブールから1000キロ離れた黒海沿岸の村
13歳のラーレは5人姉妹の末っ子で、
長女ソナイ、次女セルマ、三女エジェ、四女ヌル、そして五女ラーレ、大の仲良し。
両親を事故で亡くしてから、祖母と叔父が暮らす家に身を寄せている。

ある日の学校帰り、姉妹は男子生徒たちと海で騎馬戦。
その様子を見かけた近所の女性が祖母にチクったことから、
姉妹はふしだらだと激しく叱責される。
この村では結婚前の女は処女であることが何よりも大切。
傷物にでもなれば大変だと、祖母と叔父は姉妹を家に閉じ込めることに。

外出を禁じられ、学校にすら行くことを許されなくなった姉妹。
クソ色の服の着用を強要され、料理に裁縫と花嫁修業ばかり。
退屈で仕方ない日々に、ときおり家から抜け出すことを試みるが、
それがバレるたびに改築が施され、家は監獄化してゆく。

上から順番に勝手に進められる見ず知らずの男性との見合い話。
望まぬ縁談に心を病む姉たちの姿を目の当たりにしたラーレは……。

トルコの人たちにとってイスタンブールは特別な都市のようで、
トルコ作品を観ると、「とにかくイスタンブールへ」というシーンがよく登場します。
しかし誰もが憧れるイスタンブールであっても、
監督がおっしゃるようにトルコの縮図であるに過ぎないのでしょう。
都会のほうが多少ひらけた考え方をする人がいる率が多いとはいっても、
国としてはまだまだ保守的で封建的。

祖母の態度は孫の幸せを思いやってのもの。
だけど、叔父はどうなのか。本作で私が嫌悪感を抱いたのはこの叔父。
傷物にでもされたら困ると言いつつ、自分は姪に性的虐待
そんなことをしておきながら素知らぬ顔で縁談を進め、
見て見ぬふりの祖母が「幸せになれるわよ」と言ったときの、
姪の「冗談でしょ」という言葉と表情が頭から離れません。
直接には描かれないシーンだったのが救いですが、想像だけで相当えぐい。

誰も文句を言えずに甘んじてきた状況に立ち向かうラーレ。
力強く清々しいラストが待っています。
叔父が真っ当な人であったならば、さらに鑑賞後に爽やかな気持ちになれたはず。
あのオッサンは絶対に許さん!(--;

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