『アイアンクロー』(原題:The Iron Claw)
監督:ショーン・ダーキン
出演:ザック・エフロン,ジェレミー・アレン・ホワイト,ハリス・ディキンソン,スタンリー・シモンズ,
リリー・ジェームズ,モーラ・ティアニー,ホルト・マッキャラニー,マイケル・ハーネイ他
この日の朝、母が入院中の病院から電話があり、意識が低下していて危ないとのこと。
慌てて病院へ駆けつけましたが、私が到着したときには意識回復。
「今日はお釈迦さんの誕生日なんやて。お母さん、お釈迦さんに引かれて行くんかと思ってたのに」と言ったら、
母が「私もそう思ってたんやけど」と笑う。まったく、すごい生命力です。
そんなわけで映画を観に行っても大丈夫だろうと、109シネマズ大阪エキスポシティへ。
私はプロレスに詳しくないので、名前を聞いてもわからないのですが、
フリッツ・フォン・エリックは1960年代には日本でも活躍した伝説的プロレスラーなのだそうです。
本作は彼とその息子たちを描いた伝記ドラマで、プロレスファンでなくても楽しめます。
1980年代初頭のテキサス州。
かつて“アイアンクロー(=鉄の爪)”の異名を取っていたプロレスラー、フリッツ・フォン・エリックは、
今はプロモーターとなり、息子たちを世界最強に育て上げるべく指導している。
エリックとその妻ドリスの間にはもともと5人の男児がいたが、長男ジャック・ジュニアは幼少期に事故死。
次男ケビン、三男デビッドがデビューを飾る。
四男ケリーはアメフトと円盤投げのスター選手でありながらプロレスの資質も十二分。
五男マイクはバンド活動に興味を惹かれつつ、プロレスの練習も強いられてまずまず。
ケビンは逆ナンパされ、獣医として開業を目指すパムと結婚、子どもも授かって順風満帆に思われたが、
エリックの期待がいちばん高かったデビッドが全日本プロレスの興行で来日中に腸破裂で急死。
デビッドの穴を埋めるべくプロレスに絞ったケリーは見事期待に応えたが、バイク事故で右足首より下を失う。
また、プロレスデビューしたマイクも、毒素性ショック症候群に見舞われ、後遺症に苦しんだのち、服薬自殺。
やがてリングに復帰したケリーも拳銃で自らを撃ち抜いて死んでしまい……。
よくもこれだけ男の子ばかり生まれたものだと思いますが、この兄弟、本当に仲良し。
兄弟のなかでも父親が寄せる期待には多少の差があるから、
そのせいでお互いに嫉妬して気持ちがザワザワしたりもするけれど、
常に一緒に過ごして、一緒に試練を味わい、助け合ってきた兄弟。
みんな好きでプロレスを始めたとは思えません。
でも父親の跡を継ぐことを当たり前だと思っていて、マイク以外は厳しい練習に異議を唱えることもない。
エリックは毒親と紙一重で、力を以て子どもたちを押さえ込もうとしているけれど、
一定の時期まではそれに逆らうことなんてまったく考えていないのですよね。
自らが家族を持ったとき、当たり前だと思ってきた家族のイメージが歪だと気づく。
呪われた家族としか思えなくなって、ケビンは妻と向き合えなくなります。
やっと向き合えるようになったラストがいい。
次々と亡くなってしまった兄弟たち。
空の向こうにこんな世界が待っていたら幸せだと思いませんか。
それにしてもザック・エフロンの肉体改造ぶりには驚いたなぁ。
『ハイスクール・ミュージカル』(2006)の頃の彼はもういない。