『ケイコ 目を澄ませて』
監督:三宅唱
出演:岸井ゆきの,三浦誠己,松浦慎一郎,佐藤緋美,中島ひろ子,仙道敦子,三浦友和他
シネ・リーブル梅田にて、前述の『母の聖戦』とハシゴ。
原案は、聴覚障害者としては日本初の女性プロボクサー・小笠原恵子さんの自伝。
監督は『きみの鳥はうたえる』(2018)の三宅唱。
東京都荒川区にある小さなボクシングジム。
老舗の由緒正しいジムではあるが、このところ練習生が減り、
会長(三浦友和)は存続について考えている。
そんなジムで黙々とトレーニングに打ち込む小河ケイコ(岸井ゆきの)。
生まれたときから感応性難聴で両耳とも聞こえない。
地道な努力を重ねてプロボクサーとなり、初戦を勝利で飾っていた。
プロのリングに上がり続けるも、取材に愛想よく対応できるような性格ではなく、
実直にしか生きられない彼女は、いつしか不安に押しつぶされそうになり……。
キャストがとても良い。
会長役の三浦友和は言わずもがな、温厚な彼の分まで練習生たちに厳しいジムのスタッフに三浦誠己。
私は彼はすごいバイプレイヤーだと思っています。
可笑しかったのは、この前日に観た『あつい胸さわぎ』で関西弁にダメ出しされていた彼が、
本作では完璧な関西弁をしゃべっていること。しゃべれるやんとツッコミ入れそうになりました(笑)。
もうひとり、印象に残ったのは、『あつい胸さわぎ』でター坊役だった佐藤緋美。
字面からは女性みたいな名前だけど男性で、そのまま「ひみ」と読みます。
本作ではケイコと同居する弟役で、いい加減っぽいけれど、姉のよき理解者に思えます。
観ていて腹立たしかったのは、彼女に職質をかけようとした警官2名。
聴覚障害者だとわかったのに、マスクも外さずに大声で話しかけるだけ。
そんなんでは「気をつけて」という言葉も届かない。
同情とかではなくて、人の立場になって考えることの難しさ。
岸井ゆきののイメージが変わりました。
聴覚障害者で、プロボクサーというのは一見特殊ではあるけれど、
一女性としての彼女の葛藤は共感できる部分が大いにあります。