『ヴィレッジ』
監督:藤井道人
出演:横浜流星,黒木華,一ノ瀬ワタル,奥平大兼,作間龍斗,淵上泰史,
戸田昌宏,矢島健一,杉本哲太,西田尚美,木野花,中村獅童,古田新太他
109シネマズ大阪エキスポシティにて。
まだ30代半ばの藤井道人監督は、毎年コンスタントに長編作品を撮っていらっしゃいます。
『新聞記者』(2019)が大きな話題を呼び、社会派路線で行くのだろうと思っていたら、
『宇宙でいちばんあかるい屋根』(2020)だったり『余命10年』(2021)だったりと、
その作品は硬派なものに限らない。でもきっと硬派で行きたいと思うのですよね。
脚本も藤井監督が担当した本作は、プロデューサーとして名高い河村光庸氏の遺作となりました。
近年ではまさにその『新聞記者』をプロデュース。
公安辺りから目をつけられそうなプロデューサーって感じがしませんか。(^^;
伝統の薪能を守る山間の小さな集落・霞門村。
美しい里山の風景を残していはいるが、収入を得るためにゴミの最終処分場を誘致し、
それに依存しなければ生きていけない側面を併せ持っている村。
この村で生まれ育った青年・片山優(横浜流星)は、
彼がまだ幼い頃に父親が起こした事件のせいで犯罪者の息子と蔑まされているが、
夜中に丸岡が持ち込む大量の危険ゴミを優たち作業員に埋めさせていた。
丸岡から任されて場を仕切るのは、修作の息子でろくでなしの透(一ノ瀬ワタル)。
そんなある日、優の幼なじみで東京に出ていた中井美咲(黒木華)が帰郷。
役場に就職した美咲は広報を担当し、村を活性化させる企画を立案する。
ゴミ処分場の見学ツアーを組むことを思いついた美咲は、そのガイド役に優を推す。
不安に感じながらも引き受けた優だったが、これが好評で取材が相次ぎ……。
息子に金の無心ばかりして博打に酒にと明け暮れる母親。
しかも勝手にヤクザから何百万も借りる。
こんな母親からはさっさと離れりゃいいのにと思うのに、
これが親子の絆というものなのか、どうしても見捨てることができません。
『ロストケア』の介護士の台詞にあったように、時には絶つべき絆もある。
この村に未来はないと思いながらも出て行けない人びと。
よそ者を嫌うどころか、村の出身者ですら考えが違うと村八分にする。
村の活性化を夢見て力を合わせたところで、
抜きん出て成功する者がいれば、きっとやっかみの対象になるのでしょう。
エンドロールが始まっても席はお立ちになりませんように。
結局戻ってしまう誰かの姿が映し出されますから。
救いがないけれど、観てしまう監督です。今後も注目。