『1秒先の彼』
監督:山下敦弘
出演:岡田将生,清原果耶,福室莉音,片山友希,しみけん,笑福亭笑瓶,
松本妃代,伊勢志摩,柊木陽太,加藤柚凪,羽野晶紀,加藤雅也,荒川良々他
前述の『交換ウソ日記』の後、同じく109シネマズ大阪エキスポシティにて。
それを日本でリメイクするにあたり、監督が山下敦弘を務め、
脚本を宮藤官九郎が書くとなると、もう私の好きそうなイメージしかありません。
そのとおり、私は好き。万人受けするかというと、ちょっとツライかなぁ(笑)。
幼少時から何でも人より1秒早いせいで、いろいろと失敗の多い人生を送っている。
たとえばよーいドンでスタートするとき、何かを見て笑うとき、必ず1秒早いのだ。
ある日、河原でギターの弾き語りをする女性・桜子(福室莉音)に恋をするが、
何回目かのデートの折に、桜子には病弱な弟がいて治療費が必要だと聞かされる。
他人から見れば詐欺としか思えないのに疑いもしない一は、金の工面を検討。
花火大会のベストカップルに選ばれれば賞金を稼ぐことができると考える。
翌日曜日の花火大会デートに備える一だったが、なぜか目覚めると月曜日。
日曜日はいったいどこに行ってしまったのか。
という岡田将生演じる一を主人公にした物語を描く前半がいったん幕を閉じ、
次は清原果耶演じる長宗我部麗華(ちょうそかべれいか)を主人公に語られはじめます。
前半の麗華はどこにいるのかもわからない存在。
実は毎日84円切手を1枚だけ買い求めに郵便局へやってくる客。
一の仕事ぶりや桜子にのぼせ上がっている様子、騙されそうになっていること、
全部全部、麗華は知っています。
何事も1秒早い一に対し、何事も1秒遅れるのが幼少時からの麗華。
彼女が密かに一に執着する理由は何なのか。
ストーカーとどこが違うねんと思わなくもないけれど、彼女の過去を知れば切なすぎる。
バスの運転手役の荒川良々もそこにいるだけで可笑しい。
世の中にはテンポの早い人と遅い人がいる。
早い人のほうが得しているかどうかなんて考えてみたこともなかったけれど、
たとえば20画そこそこの姓名の人と、やたら難しい漢字の姓名の人では、
あちこちで名前を記入するだけでも費やす時間が違うのですね。
ネタバレになりますが、返してもらうべき時間の差が蓄積されて1日になる。
なんかこれって素敵なことじゃないですか。
テンポの遅い人だけが普通に動ける1日。
長宗我部、釈迦牟尼仏(みくるべ)、勘解由小路(かでのこうじ)。
小学生でも書ける姓名の私には羨ましい気もしますが、73画とか、正気じゃない(笑)。
オリジナル作品に「長い苗字」を絡めたクドカン、グッジョブ。
茗荷とパピコに郷愁もおぼえたりして、ちょっと好きな1本となりました。