『デリシュ!』(原題:Delicieux)
監督:エリック・ベナール
出演:グレゴリー・ガドゥボワ,イザベル・カレ,バンジャマン・ラヴェルネ,
ギヨーム・ドゥ・トンケデック,クリスティアン・ブイェット,ロレンツォ・ルフェーブル他
大阪ステーションシティシネマにて、前述の『地下室のヘンな穴』とハシゴ。
奇しくもフランス/ベルギー作品を2本続けて鑑賞することになりました。
舞台は1789年、革命前夜のフランス。
世界で初めて庶民のために開かれたレストランのお話です。
マンスロンはシャンフォール公爵お抱えの料理人。
ある日、公爵がいずれ王になるかどうかもかかるような大事な晩餐会が開かれる。
公爵が指定した料理以外は出さないように指示されていたマンスロンだが、
ひとりの客が味をこきおろしたうえに、これはいったい何かと尋ねる。
マンスロンが答えると、ジャガイモとトリュフを使うとは何事か、
それは豚の餌ではないか、我々のことを豚だと思っているのかと全員が怒る。
詫びるように強要されたマンスロンだがそれを拒否。
専属料理人の職を解かれて屋敷を追い出されてしまう。
息子のバンジャマンを連れて故郷の田舎に戻ったマンスロン。
もう料理はしないと決めていたが、弟子入りを望む女性ルイーズが現れる。
その熱意にほだされて、次第に料理への情熱を取り戻したマンスロンは……。
当時の料理というものは貴族のもので、金のない民衆には味などわかるはずもないと思われいたそうな。
何を気取っているのだか。
冒頭の晩餐会のシーンでは、その場のほとんど全員が美味しいと思っていたでしょうに、
たったひとりが難癖をつけただけでいきなり態度が180度変わる。
豚の餌だ、ドイツ人が食べるものを我らに食べさせるのか。そう言って料理を放り投げる。
挙げ句、豚の真似をしてみんなでブヒブヒ鼻を鳴らしはじめるのですから、貴族こそ下品。
おまえらみんな豚になってしまえと言いたくなります。
マンスロンがルイーズに欲情するシーンは不要だと思いましたし、
そもそも恋愛の要素は要らないように思います。
でもまぁ、ふたりが恋に落ちるのは仕方のないことですかねぇ。
貴族が連夜贅を尽くした食事をしているのに、田舎では人びとが飢えている。
マンスロンが焼いたパンを近所の子どもたちが盗みに来たとき、
黙って見逃そうとするマンスロンに、ルイーズが「タダで持って帰らせるつもりか」と問うと、
「タダじゃない。平和を買っている」と答えるのが印象的でした。
まともな食事ができずに貧困にあえいでいる人びとをどやせば、ますますギスギスする。
小麦粉を持ってきてくれればパンを焼くよと言い、子どもたちをレストランの給仕として雇い入れる。
何もない旅籠だったのが、旨い食事も出してくれる場に変わる。
ルイーズの嘘が判明したときはガッカリしましたが、ハッピーエンド。
味もわかっちゃいないのに体裁だけ気にする貴族の鼻を明かしてくれてスッキリです。
シャンフォール公爵はちゃんとマンスロンの料理が凄いことをわかっていただろうに。馬鹿だねぇ。