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『犬王』

2022年06月26日 | 映画(あ行)
『犬王』
監督:湯浅政明
声の出演:アヴちゃん,森山未來,柄本佑,津田健次郎,松重豊,片山九郎右衛門,
     後藤幸浩,本多力,山本健翔,吉成翔太郎,松岡美里,大友良英他
 
午後休を取って病院と役所巡り。
の診断書やさまざまな申請に必要な書類を取得するためです。
病院までの道は、弟と何度も通ったときを思い出してやはり泣く。
弟が乗っていた車はわが家で引き取ることにしたので寂しくないけど。
 
この日も実家へ寄って母が作った晩ごはんを食べたあと、
弟の部屋の片付けを早めに切り上げ、本作を観にイオンシネマ茨木へ。
 
原作は古川日出男の小説『平家物語 犬王の巻』。
彼は『平家物語』の現代語全訳を手がけています。
何年も前に読んだ『ベルカ、吠えないのか?』が少し苦手で遠ざけていました。
でももしかするとこれは面白いかもしれません。
湯浅政明監督によるアニメ化というのもすごく興味をそそられる。
 
室町時代初期。三代将軍足利義満が南北朝の統一を目指していた頃の京の都。
後に「能」と呼ばれるようになった「猿楽」の一座“比叡座”に生まれた犬王は、
何の呪いか片方の腕が異様に長く、目は目の場所に付いていない異形を持つ。
そのせいで周囲の他人どころか父親にも疎まれ、顔をずっと面で隠して生きているが、
決して悲嘆することなく、自分の兄弟に父親が教える猿楽を見ては独学。
 
ある日、そんな犬王が琵琶法師の少年と出会う。彼の名は友魚(ともな)。
友魚は壇ノ浦の漁師の息子だったが、都からやってきた侍に頼まれて、
父親と共に海底に沈む神器を引き上げるために海へと潜った。
そのときに見つけた神器によって父親は命を落とし、友魚も盲目になったのだ。
 
なぜ父親は死に至り、自分は目が見えなくなったのか。
その謎を解きたいと都に向かい、琵琶法師となった友魚。
彼は目が見えないから犬王の異形も見えない。
皆が恐れる犬王と躊躇なく言葉を交わして意気投合。すぐに友だちに。
 
やがて友魚と犬王はバディを組んで演目を披露することに。
友魚とその仲間が橋の上で犬王の舞台を告知し、犬王が舞う。
比叡座よりもよほど面白いと評判を呼び、人々は熱狂するのだが……。
 
これも時代劇だから、私の苦手意識のある分野ではあるのですが、
こうして湯浅監督がアニメ化してくれるとその意識も吹っ飛びます。
 
犬王は実在した人物で、あの観阿弥・世阿弥と人気を二分したというのに、
詳しい資料はほとんど残っていないのだそうです。
目が目のあるべき場所にないということはなかったでしょうが、
どういう人だったのか、どんな舞台だったのかを知りたくなる。
 
旧来の能とは違って斬新だと話題になった模様。
本作中ではクイーンの“We Will Rock You”さながらにドンドンパが始まり、
観衆は手を叩き、地面を打ち鳴らし、狂喜します。
もしも当時本当にこんなロックな能があったとしたら、人々の反応はどうだったのか。
どの時代でも新しいと思われるものなのでしょうか。
 
音楽を大友良英が担当。彼自身も平家の亡霊の声で出演しています。
現代の車が行き交う交差点、亡霊はうろうろしているのかもしれません。

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