夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『風と共に去りぬ!?』

2013年10月21日 | 映画(か行)
『風と共に去りぬ!?』(英題:The Grand Heist)
監督:キム・ジュホ
出演:チャ・テヒョン,オ・ジホ,ミン・ヒョリン,ソン・ドンイル,シン・ジョングン,
   コ・チャンソク,ソン・ジョンホ,イ・チェヨン,キム・ギルドン,キム・ヒャンギ他

ナナゲイで予告編を観てものすごく惹かれ、
上映館が全国でたった5館のこの韓国作品、観ておかなければ後悔しそうで。
前述の『裸足の夢 A BAREFOOT DREAM』とハシゴしました。

主演は去年ボロ泣きした『ハロー!?ゴースト』(2010)のチャ・テヒョン。
毎度めちゃめちゃ和ませてくれる人。

朝鮮王朝後期に当たる1700年代。
政治の一切を取り仕切る最高統治機関「議政府」の最高指導者は、
領議政・左議政・右議政という呼ばれる官職。
そのうちの右議政イ・ソンホの庶子ドンムは、幼い頃から利発ではあったが、
本を読むことにしか興味がない。これでは雑学が増えるばかり。
西洋かぶれのヤンと共に、お気楽な毎日を送っている。

氷が何よりも貴重だった時代、氷で儲けようと独占を企む左議政チョ・ミョンスは、
邪魔な存在であるイ・ソンホを陥れることに。
ドンムの留守宅に1冊の本を潜り込ませ、王の失脚を狙ったとして反逆罪の汚名を着せる。
拷問を受けてヤンは死亡、ドンムの放免と引き替えにソンホは流罪となる。

一方、採氷を取り締まる西氷庫別監ペク・トンスは、実直な人柄がミョンスに疎まれる。
氷の独占にこれまたトンスは邪魔だと、ミョンスはトンスをも陥れる。
ミョンスが送り込んだ刺客がトンスの監督下にあった氷を割り、
トンスの部下たちが氷海に落ちて死亡したことから、その責任を問われて失職処分に。

放免された後もありとあらゆる本を読みあさったドンムは、
ある計画を胸に失職中のトンスに会いに行く。
その計画とは、氷庫からすべての氷を盗み出し、チョ一族に復讐を果たすというもの。

ドンムの声がけで集まったのは総勢11名のスペシャリストたち。
緻密な戦略家のドンムに、最強の剣士であるトンスのほか、
国一番の爆弾製造家テヒョン、伝説の盗掘犯ソクチャン、セクシーな諜報員ソルファ、
強面の特殊荷物運搬人チョルチュ、変装の達人ジェジュン、デマ流しはお手の物のナニ、
その秘密会議を覗き見していた、こまっしゃくれたアイデアマンのチョングン。
表立ってこんな作戦には乗れない地位にあるスギョンが情報調達と資金援助を担当。
耳が遠かったり、屁をこきまくりだったりとそれぞれ難ありだが、
計画を遂行すべく着々と準備を進めて……。

それぞれのキャラが立っていて、飽きさせません。
チャ・テヒョンは相変わらず笑わせてくれますし、
トンス役のイケメンでツンデレのオ・ジホとのコンビが傑作。
メンバーに加わる2人の子どもも実に愛嬌があります。

『オーシャンズ11』(2001)や『10人の泥棒たち』(2012)の設定に似てはいるけど違う。
無関係の人を傷つけない、人の金には手をつけない。
自分たちに課したそんなルールのもとにおこなわれる復讐計画には、
仲間同士の裏切りや腹の読み合いなんてものはなくて、応援したくなること至極。
腹黒い政治家たちにぎゃふんと言わせて庶民には氷を。
父と息子のやりとりも泣けて、本国で大ヒットしたのもうなずける作品です。

『裸足の夢 A BAREFOOT DREAM』でパク役だったコ・チャンソクが
本作では盗掘犯役で出演、顔だけでも笑わせてくれますが、屁は要らん。(^^;

大がかりな計画を敢行するシーンは、もっと大きなスクリーンで観られたら、
より迫力があっただろうと、上映館が少ないことが残念。
今年は『王になった男』といい、人間味あふれる韓国の時代劇が○。

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『裸足の夢 A BAREFOOT DREAM』

2013年10月19日 | 映画(は行)
『裸足の夢 A BAREFOOT DREAM』(英題:A Barefoot Dream)
監督:キム・テギュン
出演:パク・ヒスン,コ・チャンソク,清水圭,シン・チョルジン,ト・ヨング他

『モンゴル野球青春記 バクシャー』の余韻も冷めぬうち、
同じくナナゲイにて、今度はサッカーの「実話に基づく」

キム・ウォンガンは、実業団サッカーチームで活躍した選手。
しかし、引退後に手を出した事業で騙されて失敗。
多額の借金をなんとか返済しようとオイシイ話に飛びつき、
21世紀最初の独立国、東ティモール(1999年にインドネシアの占領から解放、
国際法上では2002年にポルトガルより独立)へとやってくる。
コーヒー農園で大儲けするはずが、これがまたしても大ホラ話で意気消沈。

在東ティモール韓国大使館に駐在する外交官パクは、
まだ内戦の傷跡が深く、貧困と飢餓に覆われているこの国にいるのは危険だと、
早々に韓国へ帰ることをキムに勧める。

パクが運転する車に乗った空港までの道すがら、
キムは子どもたちが裸足でサッカーをする様子を目にする。
ここにスポーツ用品店を開けば大儲けできるではないか。
そう考えたキムは残ると決め、さっそく店をオープンする。

ところが、サッカーシューズを買う金など誰も持っていない。
あまりの無計画ぶりにパクは呆れるが、
パクから紹介された日本人中古車ディーラーの東城が割賦販売で儲けているのを見て、
子どもたちに先にサッカーシューズを与え、
1日1ドルずつ、2カ月間で完済させることを思いつく。
子どもたちは大喜びでサッカーシューズを履くのだが……。

主演のパク・ヒスンは、高知東生の見た目をさらに軽くしたような人。
何度詐欺に遭おうが学習しているとは思えず、苦しい言い訳ばかり。
金勘定ばかりして、子どもたちから巻き上げようとする姿には嫌悪感が募ります。

そんな彼に、子どもたちの家族からクレームが入ります。
子どもは大事な働き手。サッカーばかりされたら仕事をしなくて困る。
キムはそれにもっともらしく言い返しはしますが、
このときは子どものことを考えているわけではなく、
金儲けのことしか考えていませんから、何を言っても薄っぺらい。
けれども子どもたちが喜んでひたすらボールを蹴り、
ミスター・ウォンガンと頼られているうちに心情に変化が現れます。

複雑な状況下にある東ティモールでは、チームメイトの家族同士が争って、
負傷したり死亡したりしたケースもあり、試合中に味方同士で喧嘩になることもしばしば。
そんなとき、キムが考えたのは、「チーム外に敵がいれば目がそちらに向くだろう」。
その敵として真っ先に考えられるのが日本ですから、
日本国民としてはあまりいい気はしませんねぇ。

主演=軽薄、敵=日本ではあまりテンションは上がりませんでしたが、
これまでの人生で何もかもが中途半端だったキムが、
この子どもたちとなら最後までやり遂げられそうだと感じ、
国際試合に出場させようと走り回る辺りからは私も泣きモードに。

「モンゴルで野球」と「東ティモールでサッカー」とどちらが大変か。
なんて比較はできませんが、スポーツの持つ力は偉大。

同監督の『クロッシング』(2008)とはまた違った衝撃の作品です。

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『トランス・ワールド』

2013年10月18日 | 映画(た行)
『トランス・ワールド』(原題:Enter Nowhere)
監督:ジャック・ヘラー
出演:サラ・パクストン,スコット・イーストウッド,キャサリン・ウォーターストーン,
   ショーン・サイポス,クリストファー・デナム他

劇場で観た作品を優先してUPしていたら、DVDで観た作品の出番がなかなかなく。
隙間にこれもUPしておきます。

最近「トランス」が流行なのか、昨日劇場で観た作品が『トランス』ならば(これは後日UP予定)、
『アップサイドダウン 重力の恋人』に登場した企業の名前はまさに「トランスワールド社」でした。

さて、本作は2011年の未公開のアメリカ作品、9月初めよりレンタル開始。
ドーナツ型に収められた森と小屋と車のジャケット写真と、
「出会うはずのない3人、たどり着いた異次元の世界」のキャッチコピーに惹かれ。
原題は“Enter Nowhere”、そう、どこにも行けない。

意外なめっけもんで、未公開が惜しまれるとまでは行かずとも、
DVDで観るにはかなり満足、面白かったです。
未公開作品についてはしばしばそうであるように、今回もネタバレ全開モードで。
今後ご覧になる可能性のある方はご注意ください。

ガソリンスタンドに併設されたショップへ入ったカップルが、
おもむろに銃を取り出して強盗をやらかすシーンからスタート。
中年の男性店員がレジから金を取り出すが、
カップルの女のほうはレジ後ろの金庫の中身まで奪おうとする。
店員は「どうしてもと言うなら開けるが、中身は気に入らないと思う」と。
意味深に笑う店員に女はキレ、3つ数えて引き金をバンッ。

場面は切り替わり、森の中をさまよう清楚な雰囲気の女性サマンサ。
夫と車で出かけ、途中ガス欠に。助けを求めに降りた夫は帰ってこない。
夫を探そうと森の中へ。やがて古びた小屋を発見するが無人。
わずかな食糧を見つけ、盗み食いしているところへ若い男トムがやってくる。

トムは車の故障に遭ってこの森に紛れ込み、数日間ここにいるとのこと。
夜は氷点下まで冷え込むため、じっとしているのが無難だと言う。
しかし、昼間にいくら付近を探索しようとも、
なぜか毎回この小屋の位置へ戻ってきてしまうらしい。

翌日、おもてでドサッという音。サマンサが出てみると、倒れている女が。
見るからにガラの悪そうなその女は、介抱してもらったというのに終始けんか腰。
目覚めて早々に小屋を出て行くが、迷路のような森から出られずに戻ってくる。

この女こそが冒頭のシーンの強盗犯ジョディでした。
態度が少し柔和になったころ、3人が驚愕する事実が発覚します。

ここから、もろネタバレ。

3人それぞれ、自分たちがいると思っていた場所も年代もバラバラでした。
サマンサは1962年のニューハンプシャー、
ジョディは1984年のウィスコンシン、
トムは2011年のサウスダコタ。
そして全員が血縁関係にあるのです。

サマンサはジョディの母親で、出産時に死亡。
サマンサの夫、つまりジョディの父親は戦死。
両親を知らずに育ったジョディはグレて、あちこちで強盗。
獄中でトムを出産した後、死刑に。
施設に預けられたトムは、恨んでいた神父を殺してから自殺。
3人とも自分がそうやって死ぬ予知夢を見ていました。

そしてここは第二次世界大戦中のポーランド
やがて小屋での任務に就いていたドイツ人、ハンスが戻ってきますが、
このハンスこそがサマンサの父親。

ハンスが空爆を受けて死んでしまうことさえなければ、
3人の人生はちがったものになるはず。
そう考えた3人は、何が何でもハンスを防空壕へ引っ張り込んで救おうとします。
その途中、トムをかばったジョディが撃たれ、ジョディが死んでしまえば、
その息子であるトムも当然いなくなってしまうわけで。

次々に3人が消えたあと、生き残ったハンス。
ハンスが空爆を逃れたおかげでどうなったか。

過去を変えれば未来も変わる。
未来に影響を与えるようなことをするのは許されるのか。
タイムマシンものではよく問われることですが、
不幸だった3人が、不幸であってもこの世に生まれたいと願い、
自分の母親の幸せを願い、それゆえに成し遂げたこと。
いいラストです。

余談ですが、小屋の外に初めてハンスの姿が見えたとき、
「誰だろう」と言うトムやサマンサに、ジョディが「マイケル・マイヤーズだわ」。
『ブギーマン』(1981)に登場する殺人鬼のことでした。

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『クロニクル』

2013年10月17日 | 映画(か行)
『クロニクル』(原題:Chronicle)
監督:ジョシュ・トランク
出演:デイン・デハーン,アレックス・ラッセル,マイケル・B・ジョーダン,
   マイケル・ケリー,アシュリー・ヒンショウ他

夜な夜な劇場に足を運ぶことができたのは前述の『怪盗グルーのミニオン危機一発』まで。
これは真面目に晩ごはんをつくらなければいけなくなってから観た作品。
きっとウチのチームはあっさり2連敗して終わるんやろなぁと思いつつ向かう甲子園、
クライマックスシリーズ第1戦の日、試合前にTOHOシネマズ梅田にて。

新人監督による低予算映画なのに凄い出来だと評判の作品。
世間で言われる「低予算」とはいかほどなのかなと思っていましたが、
日本映画の場合は何百万円、ハリウッド映画だと何億円でも「低予算」。
本作も十数億円が注ぎ込まれているそうです。

で、おもしろいのはPOV方式の作品であるということ。
POVは“Point of View Shot”の略で、日本語では「主観映像」などと訳されていますが、
聞くたびに「主観映像」っていったい何よと思ってしまいます。
つまりは、登場人物の視線とカメラの視線を一致させたカメラワークのことで、
本作は終始、カメラおたくの主人公のカメラで追ったつくりの映像。

中古カメラを持ち歩き、日々を記録する高校生アンドリュー。
いじめられっ子タイプで友だちと呼べる者はいない。
同じ学校にかよういとこのマットだけが気にかけてくれる程度。

ある夜、同校生が集うパーティーに誘われたアンドリューは、
「カメラは気味悪がられるから置いてこい」というマットの忠告を無視。
会場でカメラを回していたところ、案の定ボコられる。

カメラを抱えて涙をこらえていたところ、
同校一の人気者で生徒会長候補のスティーブがやってくる。
マットとおもしろいものを見つけたから撮影してほしいと言う。

スティーブについていくと、原っぱに突如現れた
3人は穴に飛び込むと、つづく洞窟の奥へと進む。
そこにあった謎の物体に手を触れた瞬間、彼らの体に異変が起こる。
念じればどんな物体も動かせるという超能力が身についていたのだ。

最初はチアリーダーのスカートをめくりあげたり、
スーパーで他人のショッピングカートを動かしたりと、
他愛もないいたずらに使って楽しんでいた3人だったが……。

主演のデイン・デハーンは若き日のレオナルド・ディカプリオを思わせます。
『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命』の演技も印象的でしたが、
本作でもおどおどした線の細い少年から、憎しみを湛える少年へと変貌する様子が絶品。

マットとスティーブがとても良い子たちで、
アンドリューのことを本気で心配し、なんとか力になろうとします。
しかし、一度こわれてしまった心は元に戻らず。
超能力で物は動かせても、人の心は動かせない。
お金を手に入れることはできてもどうにもならないことがある。
そんな絶望感に覆われて、悲しい気持ちでいっぱいに。

お父さん方、こんなふうにならないように頼みます。

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『怪盗グルーのミニオン危機一発』

2013年10月16日 | 映画(か行)
『怪盗グルーのミニオン危機一発』(原題:Despicable Me 2)
監督:ピエール・コフィン
声の出演:笑福亭鶴瓶,中島美嘉,芦田愛菜,山寺宏一,中井貴一他

大好きでたまらなかった『怪盗グルーの月泥棒』(2010)。
観に行きたいとは思っていたのですが、どこも吹替版ばかり。
字幕版を上映しているのは首都圏のたった2館との噂。
DVD化されるのを待とうかなと思いつつ、結局109シネマズ箕面にて鑑賞。

前作にて引き取った孤児院育ちの三姉妹、そして黄色い軍団ミニオンたちと、
幸せで平穏な毎日を送る元怪盗グルー。

ある日、極東の秘密研究所が建物ごと上空へと吸い上げられ、
時を同じくしてミニオンの好物であるバナナをエサに、
何人かのミニオンたちも連れ去られる。
グルーの周囲には常にあまりにたくさんのミニオンがいるものだから、
何人かがいなくなったことにグルーは気づかない。

さて、世界的な悪に立ち向かう極秘組織、反悪人同盟は、
研究所を吸い上げた犯人の狙いが“PX41”なる新薬だと考える。
PX41を投与した対象物は怪物へと変身、凄まじい破壊力を持つ。
そうさせてはなるまいと、世紀の怪盗グルーに支援を求める。

自分はもう足を洗ったのだと一旦は断るグルーだったが、
三人姉妹に格好いいところを見せたいとも思い、引き受けることに。
反悪人同盟の捜査員ルーシーとともに、おそらく犯人が潜んでいるであろう、
ショッピングモールへと乗り込むのだが……。

長さもちょうどいい感じの98分、おとなもこどもも楽しめます。
べたべたの大阪弁でしゃべるグルーも悪くはありません。
だけど、前作があまりに好きだったので、
私はやっぱりスティーヴ・カレルの声で観る『怪盗グルー』がいいなぁ。

紫の化け物に変身したミニオン軍団はとてもおぞましく、
その解毒剤はいったい何なんだろうと思っていたらそれですか。
まずいものも役に立つ。あ、ネタバレだ。

DVD化されたら、トルティーヤチップスとワカモレディップをつまみながら、
ぜひぜひ字幕版で観たいです。

しかし、本作にしろタカラトミーのおもちゃ『黒ひげ危機一発』にしろ、
正しい漢字は「危機一髪」なのに、どうしてわざわざ誤った漢字の名前を付けるのかしらん。
こどもに人気の商品名に使ったら、そのまま覚えてしまっても無理はないと思うのでした。
余計なお世話か!?(^^;

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