『 打ち臥しの巫女 ・ 今昔物語 ( 31 - 26 ) 』
今は昔、
打臥の御子(ウチフシノミコ・生没年不詳。御子は巫女のこと。枕草子や大鏡に登場している人物らしい。)という巫(カンナギ・神に仕えて、神降ろしなどをする人。女性が多い。)が世にいた。
昔から賀茂(上賀茂・下賀茂両神社の総称。)の巫というのは聞いたことがないが、この者は賀茂の若宮(上賀茂神社の末社。)が乗り移られたということである。
「どういうわけで、この者を打臥の御子というのか」というと、いつも打ち臥して物を言うからである。
京じゅうの上中下の人が挙ってこの巫女に物を尋ねると、過ぎ去った時のこと、行く先に起ること、現在ある事など、すべて彼女が言う事は、露ばかりも違うことがなかったので、世の人は皆、頭を垂れ手を合わせてその言葉を信じ尊んだ。しまいには、法興院(藤原兼家)も常に召してお尋ねになったが、このように正しく見事にお答えに申されたので、深くお信じになって、常にお召しになって、御冠をお着けになり紐をお結びになった正装で、御膝を枕にさせてお尋ねになると、お思いの事が叶ったのであろう、常に召してお尋ねになられた。
そうとはいえ、こうした事を良く思わぬ人もいた。
全ての事に露ほども違わず申すので、思いが叶うとはいえ、これほど高貴な人が御膝を枕にさせて、巫女に物を尋ねられることは、すこぶる似つかわしくない振る舞いなので、「これをこころよく思わない人がいるのも道理だ」
となむ語り伝へたるとや。
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『光る君へ』は、私も見せていただいています。かなり思い切ったストーリーですが、楽しませていただいています。
貴ブログで、いつも貴重な資料を拝見させていただいています。
今後ともよろしくお願いします。
今昔からも、ネタを拾っているのですね。細かい設定も見逃せません。
又お邪魔します。