雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

少納言さまの日常生活

2014-08-02 11:00:42 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
     枕草子  ちょっと一息    


少納言さまの日常生活

『枕草子』は、いろいろなテーマを自由奔放に、悪く言えば雑多と思えるように書き並べられていますが、その中には、少納言さまの日常生活を窺わせるような文章もちりばめられています。百八十段台にもそのような内容がいくつか見られます。

中宮定子の側近くでの出来事は、平安王朝の、それも最高水準の絢爛豪華な部分が中心になりますが、少納言さまの里での生活や自分の局に下がった時などには、もっと少納言さまの日常生活に近いものが垣間見られるように思います。
例えば、第百八十六段にある、「通ってきた男が女の部屋で食事をするなんてとんでもない」「食事をさせる女にも腹が立つ」などといったのは、当時の風習として当然のことなのか、少納言さま独特の美意識なのか興味深いところです。

もっとも、少納言さまの日常生活といっても、それは貴族の日常ということになります。
藤原氏全盛の朝廷にあって、少納言さま出自の一族は不遇の時代ともいえます。それでも、中下級とはいえれっきとした貴族社会の一員であり、一般庶民とは雲泥の差があります。当時の身分格差は、現代の貧富の差などとは比べられないほど大きなものであったはずです。その点は考慮しておく必要があります。

とは言っても、現代の私たちにとって、平安時代の人々の生活を知ることは、なかなか困難なことです。
京都は、何度も大火に遭いながらも都としての風格を保ったまま今日に至っていますので、伝承されているものも少なくありません。しかし、それもまた、上流社会を中心にしたものであります。一般庶民の生活の痕跡はなかなか伝えられないようです。
そんな中で、現在まで伝えられている文学書や歴史書などの中に、ふと紛れ込んだかのように、庶民や下層級の人々の生活の匂いが伝えられていることがあります。
『枕草子』にも、そのような一面を果たしてくれている部分があるように思います。

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