雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

枕草子の弱点

2014-08-24 11:00:04 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
     枕草子  ちょっと一息 

枕草子の弱点

このところ、「何々は、・・・」で始まる章段が続いています。
これは、全く私の個人的な意見なのですが、この種の章段が枕草子の中でかなりの比率を占めていることが、枕草子の文学作品としての弱点になっているような気がしてならないのです。

もっとも、「何々は」といっても、その「何々は」は極めて広範囲であり、挙げられているものについても、古歌などから引用されているものが多く、配置され方にも、対比や様式美が取り入れられているようで、本当は、これをもって枕草子の弱点などと考えること自体が、理解不足をさらけ出していることなのでしょう。
しかし、初心者として枕草子を読み進んでいる者としては、この種の章段をどのように理解すればよいのかは、なかなかの難題です。

第十八段に『たちは、たまつくり』という極めて短い文章があります。
個人的には大好きな章段なのですが、この一文をもって文学作品としての価値を云々するのは無理があるというのは正しい意見でしょう。しかし、『たち』とは、『太刀』なのか『舘』なのか、あるいは、もっと別なものが意識されての言葉なのか。『たまつくり』にしても、単純に『玉作り』と考えてよいのかどうか。あるいは、もしかして、『たちは、たまつくり』と示すだけで、当時、分かる人には、大受けするような背景があったのかもしれません。あるいは反対に、読者を惑わせてやろうという少納言さまの悪戯に過ぎないのかもしれません。

いずれにしましても、短い文章の章段には、いろいろ考えさせられることがあります。
それらを一つ一つ悩みながら読み進めるのも一つの方法ですし、さらりと流してしまうのも一つの方法で、どちらが優れているというものではないように思うのです。
ただ、願わくば世の枕草子ファンの皆様、「何々は」という章段を温かい気持ちで取り扱ってほしいと思うのです。

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