雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

ブレない男 ・ 小さな小さな物語 ( 1812 )

2024-10-06 08:06:50 | 小さな小さな物語 第三十一部

座右の銘は「初志貫徹」だよ、と事あるごとに話す先輩がいました。
それほど親しく付き合った人ではありませんが、ある時期、同じ職場で過ごしたことがあります。直接の上司ではありませんでしたが、仕事上で接触する機会も多く、その人の部下にあたる人とは、飲みに行く機会もよくありました。
その友人の話からや、合同の会議などでも、意見や主張がブレることをとても嫌がり、会議の席上でも、意見がブレたり修整する人には厳しく接することがありました。部下の言い訳に対して、時には罵倒に近い言葉を投げかけて、「首尾一貫だよ!」と責め立てることがしばしばあったようです。
今なら、パワハラにあたりそうですが、その当時では、部下は「あんたはどうなんだ」と胸の内でつぶやきながら、嵐が過ぎ去るのを待つばかりだったようです。

反対に、考え方がコロコロ変る上司に仕えた経験があります。自分より上の人の意見に迎合して、部下への指示が一貫しないのも困るものです。
「初志貫徹」は、今でもよく耳にしますし、訓話などで使われるような気がします。しかし、そうした考え方も、行き過ぎると、「頑固一徹」や「聞く耳を持たない」と言った状態になりがちで、主義主張があまりにも強固な人との付き合いは大変です。
同時に、「物わかりの良い人」は、「親しみやすく」「包容力があり」、部下としては楽ですが、時には、「朝令暮改」を生み、組織としては脆弱になりがちのようです。

折から、船出したばかりの石破丸が逆風を受けているようです。
総裁選挙中の主張と、総裁就任後の発言にブレが多発していると責められています。首相就任後初の所信表面演説に対しては、野党からは、よくもこれほど口汚くののしることが出来るものだと、感心してしまうほどの責められようです。
ブレない男として評価されている面が強かった石破首相だけに、風当たりがよけい強くなったのでしょうが、野党からの言葉も、非難する立場にあるとはいえ、耳障りが悪すぎるような気がしました。

しかし、私個人の意見としては、石破首相の発言が、総裁選挙中やそれ以前の意見とブレが出ていることに安心感を感じています。
今回の政権は、プチ政権交代によって誕生したと考えていましたので、かなりの変革を予想していたのですが、長期的にはともかく、短期的には様変わりするような変化は心配ないような気がしたからです。
また、例えプチ政権交代だとしても、所詮は自民党政権ですから、党内基盤の脆弱な石破首相としては、個人の理想論をそのまま貫き通すことは無理なはずです。また、それが正しい政策だと全くブレることなく突き進まれると、むしろ政権は孤立することでしょうし、独裁者の手法に近づいてしまいます。
おそらく、首相の権限は絶大なのでしょうが、わが国は独裁国家ではありません。選出基盤の自民党や、民意の一方の権威である国会の声なども聞き入れてこそ、民主主義政治は成り立つのだと考えます。
人は成長とともに、考えや主義主張が変化するのは当然のことで、幅広い意見を聞いて、あるいは取入れて、ブレにブレながら、着実に私たちの生活基盤を下支えし、少しずつでも引き上げてくれる政策を見つけ出し推進してくれることを期待したいと思っています。


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