12月31日の夜9時20分から1月1日0時5分までNHK教育テレビで放映された「クラシックハイライト2009」。
クラシック音楽のすべてのジャンルで、NHKが昨年一年間に放映した優れた公演を紹介してくれました。
紅白歌合戦の裏番組というわけですが、私には昨年以来 (クラシックハイライト2008 & バレエ「ラ・バヤデール」)
楽しみな番組になっています。その中で、私の印象に残ったものを取り上げてみます。
ピアノでは、辻井伸行さんが紹介されました。今年ヴァン・クライバーン音楽コンクールで優勝した盲目のピアニシスト。
そのハンディキャップを鋭敏な聴覚に変えてしまっているように思えます。一つ一つの音が選び抜かれ煌びやかで美しい。
首をふり頭を動かしながら演奏するのも雰囲気が出ています。
日本人の若手男性ピアニストの希望の星といえるでしょう。リスト作曲「ハンガリア狂詩曲第2番」を演奏しました。
ピアニストのランラン(29歳)は、今や世界の最も優れたピアニストの一人。その卓越した技法により名前のように
楽しげに難曲を弾きこなしてしまう。
彼は、「楽譜にとどめられた音楽を生きた音楽として蘇らせ、お客様の前で演奏できることががもっともうれしくて
幸せなこと」と語っているそうです。
はじめの曲はバルトークのピアノソナタ。言葉通りに全身を使ってエネルギッシュに、力強い演奏を聞かせてくれました。
アンコール曲はショパンの「英雄ポロネーズ」。演奏する指がこんなにも良く動くのかと思わせ、
ショパンを表現するのによく使われる「花の影に隠れた大砲」を見事に具現する圧倒的な演奏でした。
ただ、叙情的な美しさには少し欠けるような気がしますが・・・。
オペラでは二期会、佐渡裕プロデュースのビゼー作曲「カルメン」。
林美智子さんが「ハバネラ(恋は野の花)」を歌い、カルメンを素晴らしい雰囲気で演じていました。
林美智子さんは日本のメゾ・ソプラノの第一人者ともいえる人。私も、テレビで「恋とはどんなものかしら」などを
歌うのをよく見ていましたし、実際に狭い会場のすぐ側で歌うのを聞いたことがあります。
しかし、カルメンをあのように上手に歌い踊るとは思っていませんでした。
東京でも、この公演があることは知っていたのですが、見逃してしまったのは残念なことでした。
NHKでここの「カルメン」全曲を放映したかどうか分かりませんが、機会があったら、舞台を見てみたいし、
ビテオでもいいから見てみたいと思います。
もう一つのオペラ、ミラノ・スカラ座の東京公演のヴェルディ作曲「アイーダ」、ダニエル・バレンボイム指揮で演出は巨匠ゼフィレッリ。
ゼフィレッリは新国立劇場の「アイーダ」(めいすいの音楽随想 オベラ「アイーダ」) も演出しています。
同じ舞台装置でこれまで何回か行われていますが、その都度人気が異常に高く、会員の先行予約であっても良い席が取れません。
こちらも引っ越し公演とは言え、さすがにゼフィレッリの演出ということで古代エジプトを彷彿とさせる見事な舞台となっていました。
アリアはラダメスの「清きアイーダ」とアイーダの「勝ちて帰れ」を放映しました。
しかし、ハイライトとあって写真の「エジプトと聖なる国土の守護神イシスの神に栄光あれ」の場面はほんの少しの映像でした。
アイーダトランペットの奏でられる、このオペラのもっとも迫力ある場面は、もう少し、見たい所でした。
でも、この公演は一流の歌手と演奏を聴かせてくれたでしょうが、実際に見るにはチケットが少々お高かったかも知れません。
バレエではラヴエルのボレロ。名振り付け師のモーリス・ベジャール (1927-2007) 追悼、「東京バレエ団」公演。
「バレエの舞台は、スペインのある町にある小さな酒場。一段と高い丸い踊り舞台を囲んで、大勢の客たちが酒を飲んでいる。
最初、一人の踊り子が脚ならしをしているが、しだいに感興がわいてきて情熱的なスペイン・ダンスを始める。
はじめのうちはそっぽを向いていた客たちも、その強烈な舞踏のリズムと、妖艶な踊り子の姿に魅惑され、
ついに舞台ののまわりに集まってくる。そして、音楽が高潮するにしたがって彼らも興奮の極みに達し、
手拍子をまじえながら熱狂的に踊りだす。」 (文:志鳥栄八郎)
この曲はもともとバレエのために作曲された曲なのですが、オーケストレーションがあまりに素晴らしいので管弦楽曲と
思われるほど演奏会で取り上げられます。私もバレエ音楽であるということは頭の片隅にしかありませんでした。
しかし、モーリス・ベジャール振り付け、バレエダンサーのシルヴィ・ギエムの踊りは無駄をそぎ落とした、
素晴らしいバレエを私達に見せてくれ、近代バレエをまるで古典バレエのように見せてしまう説得力がありました。
今回の放映はノーカットであったのも良かったと思います。最初は照明が身体の1部を照らすことから始まり、
写真下、一人の全身の踊りに・・・。そして、写真上の大勢の踊りに・・・。
ラヴェル作曲の「ボレロ」が名曲であることをもう一度教えてもらいました。
オーケストラではパーヴォ・ヤルヴィ指揮シンシナティ交響楽団。
シンシナティのメンバーはヤルヴィの軽やかで的確な指揮ぶりに応え、故郷「新世界」を表現するための簡潔で素直な
演奏をしており、好感が持てました。
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クラシック音楽のすべてのジャンルで、NHKが昨年一年間に放映した優れた公演を紹介してくれました。
紅白歌合戦の裏番組というわけですが、私には昨年以来 (クラシックハイライト2008 & バレエ「ラ・バヤデール」)
楽しみな番組になっています。その中で、私の印象に残ったものを取り上げてみます。
ピアノでは、辻井伸行さんが紹介されました。今年ヴァン・クライバーン音楽コンクールで優勝した盲目のピアニシスト。
そのハンディキャップを鋭敏な聴覚に変えてしまっているように思えます。一つ一つの音が選び抜かれ煌びやかで美しい。
首をふり頭を動かしながら演奏するのも雰囲気が出ています。
日本人の若手男性ピアニストの希望の星といえるでしょう。リスト作曲「ハンガリア狂詩曲第2番」を演奏しました。
ピアニストのランラン(29歳)は、今や世界の最も優れたピアニストの一人。その卓越した技法により名前のように
楽しげに難曲を弾きこなしてしまう。
彼は、「楽譜にとどめられた音楽を生きた音楽として蘇らせ、お客様の前で演奏できることががもっともうれしくて
幸せなこと」と語っているそうです。
はじめの曲はバルトークのピアノソナタ。言葉通りに全身を使ってエネルギッシュに、力強い演奏を聞かせてくれました。
アンコール曲はショパンの「英雄ポロネーズ」。演奏する指がこんなにも良く動くのかと思わせ、
ショパンを表現するのによく使われる「花の影に隠れた大砲」を見事に具現する圧倒的な演奏でした。
ただ、叙情的な美しさには少し欠けるような気がしますが・・・。
オペラでは二期会、佐渡裕プロデュースのビゼー作曲「カルメン」。
林美智子さんが「ハバネラ(恋は野の花)」を歌い、カルメンを素晴らしい雰囲気で演じていました。
林美智子さんは日本のメゾ・ソプラノの第一人者ともいえる人。私も、テレビで「恋とはどんなものかしら」などを
歌うのをよく見ていましたし、実際に狭い会場のすぐ側で歌うのを聞いたことがあります。
しかし、カルメンをあのように上手に歌い踊るとは思っていませんでした。
東京でも、この公演があることは知っていたのですが、見逃してしまったのは残念なことでした。
NHKでここの「カルメン」全曲を放映したかどうか分かりませんが、機会があったら、舞台を見てみたいし、
ビテオでもいいから見てみたいと思います。
もう一つのオペラ、ミラノ・スカラ座の東京公演のヴェルディ作曲「アイーダ」、ダニエル・バレンボイム指揮で演出は巨匠ゼフィレッリ。
ゼフィレッリは新国立劇場の「アイーダ」(めいすいの音楽随想 オベラ「アイーダ」) も演出しています。
同じ舞台装置でこれまで何回か行われていますが、その都度人気が異常に高く、会員の先行予約であっても良い席が取れません。
こちらも引っ越し公演とは言え、さすがにゼフィレッリの演出ということで古代エジプトを彷彿とさせる見事な舞台となっていました。
アリアはラダメスの「清きアイーダ」とアイーダの「勝ちて帰れ」を放映しました。
しかし、ハイライトとあって写真の「エジプトと聖なる国土の守護神イシスの神に栄光あれ」の場面はほんの少しの映像でした。
アイーダトランペットの奏でられる、このオペラのもっとも迫力ある場面は、もう少し、見たい所でした。
でも、この公演は一流の歌手と演奏を聴かせてくれたでしょうが、実際に見るにはチケットが少々お高かったかも知れません。
バレエではラヴエルのボレロ。名振り付け師のモーリス・ベジャール (1927-2007) 追悼、「東京バレエ団」公演。
「バレエの舞台は、スペインのある町にある小さな酒場。一段と高い丸い踊り舞台を囲んで、大勢の客たちが酒を飲んでいる。
最初、一人の踊り子が脚ならしをしているが、しだいに感興がわいてきて情熱的なスペイン・ダンスを始める。
はじめのうちはそっぽを向いていた客たちも、その強烈な舞踏のリズムと、妖艶な踊り子の姿に魅惑され、
ついに舞台ののまわりに集まってくる。そして、音楽が高潮するにしたがって彼らも興奮の極みに達し、
手拍子をまじえながら熱狂的に踊りだす。」 (文:志鳥栄八郎)
この曲はもともとバレエのために作曲された曲なのですが、オーケストレーションがあまりに素晴らしいので管弦楽曲と
思われるほど演奏会で取り上げられます。私もバレエ音楽であるということは頭の片隅にしかありませんでした。
しかし、モーリス・ベジャール振り付け、バレエダンサーのシルヴィ・ギエムの踊りは無駄をそぎ落とした、
素晴らしいバレエを私達に見せてくれ、近代バレエをまるで古典バレエのように見せてしまう説得力がありました。
今回の放映はノーカットであったのも良かったと思います。最初は照明が身体の1部を照らすことから始まり、
写真下、一人の全身の踊りに・・・。そして、写真上の大勢の踊りに・・・。
ラヴェル作曲の「ボレロ」が名曲であることをもう一度教えてもらいました。
オーケストラではパーヴォ・ヤルヴィ指揮シンシナティ交響楽団。
シンシナティのメンバーはヤルヴィの軽やかで的確な指揮ぶりに応え、故郷「新世界」を表現するための簡潔で素直な
演奏をしており、好感が持てました。
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