マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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下平田のカンピョウ干しから広がる話題

2017年02月21日 07時39分50秒 | 民俗あれこれ(干す編)
明日香村平田の地蔵まつりを拝見したく訪問した。

場所は大字平田の下平田。

大字平田は上に上平田。

国道169号線に近い方が下平田になる。

みみなおし地蔵尊があるのは、その国道169号線沿いである。

早朝に集まった村の人らは揃って作業をしていた。

会所とも思える建物や地蔵尊も綺麗にする。

数時間もかけて清掃されたら境内もすっかり美しくなった。

午後は地蔵まつりの設営であるが、その場にいた男性がおられたのでお声をかけた。

その人は家が隣にあるから留守番をしているという。

この日の行事についてざっと教えてくださる男性は自宅でカンピョウ干しをしていると云う。

カンピョウはユウガオの実。

畑で栽培しているからついておいでと云われて案内される。

畑はどこにあるかと云えば国道を越えてまだ先のところである。

その先の畑は近鉄電車の線路を越えたところにある。

うちの畑やからついておいでと云われて後を追いかける。

その場は雑草も生い茂る地。

カボチャもあればカンピョウもだ。

カボチャは葉っぱも花も実も知っているが、カンピョウは未だかって実物を拝見したことがない。

カボチャではない大きな葉がある。



そこに咲いていた大きな白い花がある。

それがカンピョウ・・・ではなくユウガオである。

ユウガオの花は夕方に咲いて翌朝に萎む。

案内された時間帯は午前11時半。

ほとんどの花が萎れていたが、ほんの少しだけマシな花があった。

葉っぱと花の形を撮っておけば今後の役に立つ。

カンピョウを干している地が判れば栽培している畑を探す。

それがわかるようになれば今後に役立つ。



そう思って撮らせてもらった。

さて、ユウガオの実である。

生い茂ったユウガオの葉っぱで畑地が見えない。

そこら辺りにずっしりした実があるかもわからんから探してやといわれて付近を探し回る。



覆っていた葉をどかせると中から出てきたユウガオの実はでかい。

我が手で測った長さはおよそ35cm。

いちばん太っている部分の幅は直径20cm。

重さは計測器がないからわからないが、そうとうな重さに違いない。



ご主人はユウガオの実を抱えて持ち帰るが、ヘタは切取っているようだ。

ところである。

ユウガオの花には雌雄があるという。

花が咲いても実にならないのは雄。



カンピョウになる実は雌花であるという。

それも探して辺りを・・・。

あった。

なるほど、授精した雌花は徐々に膨らんでぴっとしたこういう形になる。

下部は実であるが、上部は萎れた花部分。

やがては消えて下部の実が成長する。

そうなると思うが、今回はここまでだ。



親切丁寧にわざわざ畑まで出向いて案内してくれた男性は畑にいっぱい育っていたツルクサをカマで刈った。

特に新葉が美味しいツルクサはこうして摘み取る。

これを2、3分茹でてマヨネーズ和えで食べる。

これがほんまに美味しいのである。

男性は自宅に戻って干す道具を見せてくださる。

大きな銀杏が植生する崖山。

そのすぐ傍に立てているカンピョウ干しの道具はそうとうな長さだ。

上部を見上げてみれば滑車。



そこに布紐を架けた水平棒がある。

垂直に立てた支柱は木製。

水平にしている平行棒も木製であるが、布を巻き付けている。

こうしておかないと干したカンピョウが木材にくっついて剥がれなくなるのだ。

天理市の庵治町で拝見した水平棒は稲藁でくるんでいた。

材は違うが、これもくっつき防止である。

今年は4回も干したというから豊作なんであろう。

ちなみにこのカンピョウ干し道具には名前がない。

どこで聞いてもそういうことだ。

さて、あれほど大きくなったユウガオの実はどのようにして細く剥いていくのだろうか。

それには道具が要る。



一つはナタのような大きな刃をもつ包丁である。

もう一つはご主人が作ったハンドメイドのカミソリである。

画面でわかると思うが、小刀を木製の道具に括り付けている。

その大きさ、刃の長さは手に馴染んで使いやすいように加工している。

始めに使う道具は包丁だ。

ラグビーボールのような形のユウガオの実を幅数センチに輪切りにする。

その幅は感覚的でいい。

厚さが数センチの円盤ができる。

何枚かに輪切りする。

ヘタは不要なので切り落とす。

円盤は皮付き。

その皮を剥ぐのが自家製のカミソリである。

皮を剥いでいけば真っ白な肌をみせるユウガオの実。

これを厚さが均等になるようにカミソリで剥いていく。

タネがある中心部までは剥かない。

その手前ぐらいで終える。

長くなったひも状の姿になればカンピョウである。

そろっとそれを水平棒に架ける。

何本も、何本も剥いては架ける。

手間がかかる作業は水平棒を揚げて終わる。

紐を引っ張れば滑車がくるくる回って水平棒が揚がっていく。

青空に広がる白いカンピョウはまるで夏の簾。

美しい姿をみせてくれる。

ご主人が動いた。

何をするかといえば、ギンナンの殻割りだ。

家にある銀杏は毎年のようにおやつを落としてくれる。

ポタポタ落ちるギンナンの実を拾って干しておく。

はっきりいってギンナンの実の匂いは独特で臭い。

実の廻りのぬるぬるしている部分が臭いから作業は手袋が必須。

それも臭気が漏れないような手袋である。

水で流して綺麗にしたら干す。

保存は新聞紙に包んで冷蔵庫。

カラカラに乾いたら炒らなければならない。

電子レンジでチンして食べているというご家族。

性能にもよるが3~5分。

弾ける音が数回聞こえたら出来上がり。



ペンチでも構わないから殻を割って黄色い実を食べる。

乙な味に惚れるが割れていない殻はどうもアカンようだ

(H28. 7.23 EOS40D撮影)