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読書 ジェフリー・ディーヴァー「クリスマス・プレゼント」

2006-10-05 11:25:24 | 読書

               
 16編のミステリー短編集。一言で言えば、次の展開が待ち遠しくページをめくるのももどかしい。チョット大げさかもしれないが、最近では珍しく興奮した作品。
 いずれも意外性に富んでいて、作家が読者を誘惑して、本の中に叩き込むのを究極の目的とするなら、成功している。

 例えば、最初の1篇「ジョナサンがいない」マリッサ・クーパーは、ジョナサンとの記憶は一箇所に行き着いてしまう。ジョナサンのいない人生。
 読者は夫が交通事故か何かで亡くなったと思うだろう。おまけにデイル・オバニオンと言う男をレストランで待つという。てっきり新しいボーイフレンと思い込む。
 高級住宅地で、ケーブルテレビ会社員ジョゼフ・ピンガムと名乗る男に主婦が殺される。主婦のセーターを脱がせ、ジーンズのボタンをはずしながら思案する。マリッサ・クーパーになんて名乗ったのか。思い出して納得する。マリッサは夫殺しを依頼していた。

 これが巧妙に語られる。それに、気の利いた表現、
 “楓(かえで)や樫(かし)の葉は、金色だったり、心臓のような赤だったりする”
 “涙は感情という天候の気圧計だ”
 “あの陽光をごらんなさい。栂(つが)や松の黒い幹に輝くリボンをまとわせている”などが心憎い。

 著者は子供の頃から短編をせっせと書いていて、長編よりも難しいという。1950年シカゴ生れ。ミズーリ大学でジャーナリズムを専攻。雑誌記者、弁護士を経て40歳でフルタイムの小説家となる。