![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/75/eb/2d480c73f89db265716802977813301e.jpg)
余計なことを考えずにストーリーを追うだけなら面白いといえる本だ。週刊誌の事件ファイルなどに書かれているようなといえばいいのかもしれない。
日本史専門の大学教授高屋が東証一部上場の港食品の社外取締役に要請される。ほぼ半月後、港食品が製造した缶詰が輸出先のアフリカ東海岸で、腐っていた缶詰を食べた人々が続出し、三人の死者まで出る。
収拾策として現社長が退任し、高屋が代表取締役に就任する。ところが、高屋の大学時代のセクハラスキャンダルが暴かれる。そして失脚、おまけに妻からも離婚される。おおよそ、こんなプロットが展開される。
全体として登場人物の印象が薄い。その人物の描写が名前だけというせいなのだろう。体形や髪型、衣服それに趣味、嗜好などが見られないため等身大にイメージできない。
アメリカンミステリーを好んで読む者にとっては少し物足りない。それに美女も出てこない。サイドストーリーに登場させてもいいのでは……なんて思ったりする。
いずれにしても、エンターテイメント性が少し欲しい。この本の前に、フィリップ・マーゴリンを読んでいたのでどうしても比較してしまう。国民性もあることだから仕方がないか。
ただ、私の大嫌いなA市、K社などの用語はなく、架空ではあってもちゃんと固有名詞を配置してあるのは好感が持てるし、読者がこの程度の小説なら自分にも書けるという希望を与えてくれる点は収穫だった。
著者は、1949年生れ。東大法学部卒、検事を経て国際弁護士になる。‘97「株主総会」で作家デビュー、各紙誌で絶賛されるとある。