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オレンジ・カウンティ保安官事務所刑事部殺人課巡査部長マーシ・レイボーン。36歳シングルマザー、息子のティム1歳6ヶ月をこよなく愛し、凶弾に倒れたティムの父親ヘスの教えを忠実に守る。
目を見張るほどの美人で19歳のコールガールが殺される。その捜査と平行して、年末恒例の未解決事件ファイルを分配されたのは、32年前の売春婦殺害事件だった。
この二つの事件が現役の保安官や刑事、現場捜査官そしてマーシの父親も含めて複雑な展開を見せる。
マーシの立場からの心理的な葛藤を軸に、どこにでもある組織の人間関係や政治的駆け引きといったものが浮かび上がる。女性であるマーシを、息子のティムとの描写以外はまったく女を感じさせない。女性警官をことさら強調していないところがいい。保安官事務所を指揮する野心家に描いてあるのも頷ける。
犯行現場の検証、鑑識結果の記述の詳細なことは、プロ作家の面目躍如といったところ。なかでも銃器にうとい日本人には理解がむつかしい。
“薬莢はコルト45のもので、当然、薬莢底に雷管を備えたセンターファイアだ。以上は刻印(ヘッドスタンプ)からも明らかである。放射状の製造痕はエクストラクターとエジェクターの形状を示しており、……”と言った具合。
とにかく後半の展開は意表を突くものだった。
著者は1953年ロサンゼルス生れ。オレンジ・カウンティの公立高校、カリフォルニア大学アーヴァイン校を卒業。’78年からオレンジ・カウンティで新聞記者として働く。‘85年作家としてデビュー。’02年「サイレンと・ジョー」でMWA賞最優秀長編賞を受賞。