銃で撃たれた後、木に吊るされたテレビ・キャスターとして有名人のウォルトン・ウィークス、その後すぐ大型ごみ容器で発見されたウィークスの妻も銃で撃たれていた。
小さな田舎町のパラダイスで起きた大きな事件。それを捜査するのは、ジェッシイ・ストーン署長ほか数名の警察官。捜査で忙しい最中にジェッシイの元妻ジェンがレイプされたとジェッシイの元に駆け込んでくる。
ジェンの件は恋人で私立探偵のサニー・ランドルに任せながら、元妻ジェンとそれにサニーとの愛の行方が大人の雰囲気で繊細に語られる。二つの件が並行して進み、パラダイス署の警官たちのやり取りにユーモアでくすぐられながら読後感に余韻を残す。
とりわけジェッシイ署長、モリイ巡査、スーツ警官の日常は、ほのぼのとした雰囲気は捨てがたい。特にジェッシイ署長の頭のよさをひけらかせず、喋りすぎず相手の言葉に耳を傾けるという聞き上手で、ユーモア感覚あふれる言葉に魅入られる。それでも鋭い質問が飛ぶという相手にするとかなり手強い。
おまけに腕力も相当なもの。それからもう一つ気づいたのは、男性作家の共通点として、女性を描写するのに性的なものを匂わせる点だろう。これは男の宿命みたいなものだろう。
「ジェッシイは大きなグリーンのレザー・ソファの片側に、ローリーがその反対側に座った。彼女は、白地に大きな赤い花柄模様の、丈の短いサマードレスを着ていた。脚を組むと、太股が露わになった。“なかなかいい腿をしている”ジェッシイが思った」女性作家の場合、こういう描写はないだろう。当たり前か。視点の違いは当然だから。