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読書 マイク・モラスキー「その言葉、異議あり!」

2008-02-02 10:03:05 | 読書

              
 著者のモラスキーさんは、日本滞在十数年という日本を熟知している方で、この十数年というのは延べであって、母国アメリカと行ったり来たりした結果だそうだ。従ってべったりと日本に住み着いたというわけではない。
 日本の時代の変化に加えアメリカでの変化も敏感に捉えて、文化批評も辛口で的確に描写してあるのも頷ける。
 目次を見るとパート1として『まず我を笑おう』とあって、自分自身を笑いの対象にしている。とにかく道を間違えてよく迷うという。
 その中で「アメリカでは、男というのはプライドが高いため、車を運転していてたとえどんなに迷っても絶対に他人には道を聞かない」という記述がある。
 そういう視点から見ると、私なんかは、男失格の烙印を押されかねない。ちょっとおかしいなと思えばすぐに聞きまくっているからだ。それなのに、カーナビが嫌いときているから始末に負えない。
 それから「おフランス」、頭文字の「お」に皮肉が内包されていると著者は思ったそうだ。しかし、言った人は大真面目、それはそうだろう上品ぶって何にでも「お」をつけたがる。敬語の乱用の極みで、昔、銀行利息を「お利息」と聞いたとき仰天した。
 では、アメリカはどうか。“アメリカ人は、「おフランス」という表現の、皮肉のニュアンスなら、すぐに察知できる。何せアメリカには、上品ぶっているような気取り屋を馬鹿にし、引きずり下ろしたくなった際には、何らかの形で「フランス」に結びつければよい、というお決まりのテクニックがあるからだ」という。
 しかし、著者がパリに滞在してその偏見は払拭したようだが、歩道に散らばる犬の糞には閉口したようだ。

 読みどころは幾つもあって、ブッシュ大統領とライス国務長官に触れた記述にはある種感銘を受けた。特にライス長官について。
“アメリカでは、女性が男性と対等の地位に辿りつくのに、二倍の能力と努力が必要だ、とよく言われる。そうだとしたら、南部生まれで黒人の女性という少なくとも二重のハンディを負うコンドリーザ・ライスは、おそらく普通のアメリカの白人男性の四倍の能力と努力が必要だったといえるのではないだろうか。
 どんなに彼女の政治的イデオロギーが嫌いであろうと、その意味では一目おくべきだと思う”

 ところで「バーコード」や「ライブハウス」が和製英語だということ知ってた?その「バーコードについて、友人に説明して教えると、たいていの人は大喜びする。また、「なぜ、われわれ英語圏人はそのような表現を思い浮かばなかったのだろうか」という人もいる”これなど痛快ではないか。
 著者は、セントルイス市生まれ。70年代から述べ十数年にわたって日本に滞在。シカゴ大学大学院東アジア言語文明学科博士課程終了(日本文学で博士号)。現在ミネソタ大学アジア言語文学科准教授。
 また、2007年9月よりい1年間、国際日本文化研究センター(京都)に招聘研究員として在籍し、「日本のジャズ喫茶文化」の研究に専念。「戦後日本のジャズ文化――映画・文学・アングラ」で2006年度サントリー学芸賞(社会・風俗部門)を受賞。ジャズ・ピアニストとして日本のライブハウスにも出演することもある。
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