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読書 ロバート・B・パーカー「背信」

2008-02-06 13:13:43 | 読書

               
 私立探偵スペンサー・シリーズ31作目。ベージュのパンツスーツに大きな真珠の首飾り、赤味がかったブロンドの長い髪を徹底的にスプレイしてあって、中世の宗教画に見る円光のように顔を囲んでいる。
 唇は心持薄く、目が小さい。美人だ。その女性が「あの野郎は、丸一日ペニスをズボンに納めておくことができないのよ」とスペンサーに語りかける。
 いずれにしてもこの女性マーリ-ンの夫の浮気現場を確認することになる。ところが事はそれで済まない。最高財務責任者の夫が事務室で殺され事態は混迷を深める。
 スペンサーの思考と心と肉体のよりどころスーザン、力のよりどころホーク、ヴィニイほかの面々が、適度に楽しませてくれる読み物だ。
 当然スペンサーが事件を解決する。というわけで、今回は、パーカーが人物の服装や女性をどのように描くかを主に見てみた。
 殺された最高財務責任者の服装は、“タン色のサマー・スーツにピン・カラーの紺色のシャツ、淡い紺のタイを締めている”
 タン色というのは、鈍い黄赤色のこと。それにピン・カラーは、ピン・ホールカラーシャツといってシャツの襟の両方に糸で丁寧にかがられたアイレットが開いていて、そこに安全ピン状のものや棒状のピンを通して引き締めるタイプのシャツ。かなり洒落者の装いだ。それにこの配色は誰にでも合うものでもないだろう。
               
 “スーザンはぴっちり合った白いパンツをはいていて、紺と白の縞模様、襟を広く深くスクープしたトップは、彼女が世界中のいかなる女性より形のいい僧帽筋の持ち主であることを示している”
 僧帽筋Trapezius(muscle)は、人間の背中の一番表層にある筋肉。
               
 登場する女性はみんな美人だった。スペンサーは料理も得意で、今回はナスを省いた「ムサカ」を作っていた。スペンサーはなすが嫌いのようだ。
 「ムサカ」は、バルカン半島と中東の伝統的ななす料理。ギリシャ料理として名が知られており、ギリシャ版はラム肉、スライスしたナス、トマトを何層にも敷き上にホワイトソースをかけてオーブンで焼くというもの。
 それにしても翻訳になじめなかった。まず、「……と思うのだ」とか「……始めたのだ」という会話が、男の登場人物すべてに使われている。スペンサー・シリーズは大体この調子で、気になることではある。それに古風な「接吻」も今に合わないように思う。翻訳者はかなりの高齢なのではと推測している。
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