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女性私立探偵サニー・ランドル・シリーズ第三作目。訳者あとがきに、このサニー・ランドルを生み出したきっかけが、’97「恋愛小説家」でアカデミー主演女優賞受賞の女優ヘレン・ハントからの依頼で実現し、作品が好評だったためシリーズ化したとある。
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ヘレン・ハント
人気ロマンス小説家メラニー・ジョウン・ホールが別れた夫につけまわされるのを嫌いボディ・ガードとしてサニーを雇う。メラニーの新作売り込みのプロモーション・ツアーにも同行するが、そのツアー先の書店に元夫の精神科医ジョン・メルヴィンが現れる。
彼を見たメラニーは失神してしまう。サニーは調査を開始する。調査が進むにつれ、メルヴィンはとんでもない危険な男であることが分かってくる。サニーには今でも友人関係を維持している元夫のリッチーとも相談しながら、あくまでも自分の力でこの問題を解決したいと思っている。最後はリッチーの手助けで事件は解決するが。
登場人物はすべて離婚経験者かゲイという設定。サニーは勿論、作家のメラニー、サニーの友人ジュリー、友人のスパイクはゲイという按配。サニーのキャラクターは、元夫のリッチーに言わせれば「君はメグ・ライアンにそっくりで、おじ貴のフェリックスよりタフだよ」ということになる。美人で自己主張が強いが心の優しい三十代中ほどの魅力的な女性探偵。
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メグ・ライアン
自身の男遍歴も活発なもので、警官だったころの同僚刑事やハリウッド人種の男との楽しみも満喫するというもの。肩がこらず気楽に読み終えたが、女性私立探偵を男性作家が描出すると、どうしても男の視点に立ったものになる。
女性私立探偵で有名なキャラクターにサラ・パレッキーのウォショースキー、スー・グラフトンのキンジー・ミルホーンがいるが、それらとはまったく違ったキャラクターになっている。女性の体を持った男といえばいいのか。
“ああ、彼に会いたい。彼に抱かれたい”とサニーは思いをめぐらすが、“彼に抱かれたい”は男の視点そのもので、女性作家なら“彼を抱きしめたい”とするのではないだろうか。“彼に抱かれたい”は男の傲慢さの表れに思えてならない。
ロバート・B・パーカーは、料理にも蘊蓄(うんちく)があるようで、食べ方にも気配りをする。串に刺したえびを食べる場面で「かぶりつくのは行儀が悪いので、ナイフで切ることにした」とか、レストランでの「彼は食べ物を少しずつ口に運んで、上品に食事をした」とわざわざ指摘している。
そこでいつもわたしが思っているのは、天ぷらを食べるとき箸では細かく出来ないので大振りのえびなんかは、かぶりつくことになる。外から見ているとどう考えても上品さに欠けるのは確かだ。何とか上品に食べることは出来ないのかと思うが、残念ながら食べる方法はかぶりつくこと以外にない。ナイフで切る? まさか!
いずれにしても料理を上品に食べるという心構えは大事だと思う。着飾った美女が大口を開けて食べ物を口に運んでいるのを見るとうんざりしてしまう。