2003年3月20日アメリカはイラクを攻撃した。イラクの武装解除問題、つまり大量破壊兵器(核兵器)の破棄義務違反を理由としたイラク戦争だった。
後に分かったことだが、そもそもイラクには核兵器が存在しなかった。ブッシュ政権の大失態だったが、その事実がこの映画で明らかになる。
そしてブッシュ政権は、法律を犯していないアメリカ一市民を見捨て、社会の敵のように仕向ける。巨大な権力と狡猾な手法を持つ政府と善良なだけが取り柄の夫婦の愛の物語である。
CIA工作員の妻ヴァレリー・ブレイムをナオミ・ワッツが元大使の夫ジョー・ウィルソンをショーン・ペンが演じている。政府もCIAも自分たちにとって都合が悪くなると謀略をめぐらすか無視する。犠牲になったのがヴァレリーとジョー夫妻だった。
後にヴァレリーは、下院監査・政府改革委員会での証言で「イラクの大量破壊兵器開発を突き止め上層部に報告する任務でした。世界各地で極秘裏に展開される作戦をワシントンのCIA本部から指揮すると同時に極めて重要な情報を得るために極秘任務で諸外国へも行きました。私は国を愛し、仕事を愛しました。CIA工作員として重要な責任を託されたことを誇りに思います」と述べた。
そういう国家への献身も、ずる賢い政府や政府機関によって消し飛んでしまった。夫のジョーは、声を上げた。その結果妻の身分が公になる。と言っても政府が暴露したわけではない。アメリカには「情報部員身分保護令」という法律があり公に出来ない仕組みがあるとのこと。これは政府高官のリークしかない。意図的なリークだ。
夫婦は追い詰められるけれどジョーはやめない。「政府の犯罪、国民に対する罪を守り通せるなら、国家の責任とは限られた権力者の手にあるのではない。我々は圧政に屈することはない。一人一人が国民としての義務を忘れない限り道路の穴の報告も一般教書の嘘を追及することも、 声を出せ! 質問するんだ。真実を要求しろ。民主主義は安易に与えられはしない。だが、我々は民主主義に生き義務を果たせば子供たちもこの国で暮らせる」 講堂に集まった人々を前に語るジョー。
「フェア・ゲーム」この題名がなぜが皮肉に思えるのは私だけか? なお、追い討ちをかけるように補佐官のリビーが有罪、禁固刑2年半、罰金25万ドルの判決だったのを、ブッシュ大統領は権限を行使して猶予の減刑を表明して国民の不興を買った。なんともお粗末だったなあ、ブッシュは。
左ナオミ・ワッツ 右ヴァレリー・ブレイム本人
監督
タグ・リーマン1955年ニューヨーク生まれ。’02「ボーン・アインディティティ」’04「ボーン・スプレマシー」’07「ボーン・アルティメイタム」のボーン・シリーズがある。
キャスト
ナオミ・ワッツ1968年9月イギリス、ショアヘム生まれ。
ショーン・ペン1960年8月カリフォルニア州サンタモニカ生まれ。’03「ミスティック・リバー」’08「ミルク」でアカデミー主演男優賞受賞。