半年間でマルセイユの港湾問題を解決。リール~トリノ線を開通させ、港湾の民営化も実現させた運輸大臣ベルトラン(オリヴィエ・グルメ)は、鏡の前で“闇夜に餓えたトラとなれ”と自分を鼓舞する。
政界を舞台に大臣と秘書官ジル(ミッシェル・ブラン)の哀歓が描き出される。やり手のベルトランでも、ふっと漏らす言葉に人生は一人ぼっちを実感する。
オペラ鑑賞がストで中止になったとき、いつも行動を共にする女性秘書に「飲みにいくか?」と聞くと「今日はダメ、用事があるの」という返事。
スマートフォンのアドレスを眺めて「4000件中 友人はゼロだ」と呟く。華々しい仕事ぶりから、この言葉は寂しさが漂う。
主演のオリヴィエ・グルメの風貌は、いわゆる欧米人には見えない。日本人といっても違和感がない。さすがに体つきは日本人とは違うが。
秘書官役のミッシェル・ブランの飄々とした雰囲気を醸し出すところは注目に値する。2011年セザール賞助演男優賞受賞も肯ける。
これといってスキャンダルがあるわけでもない。淡々と物語りは進む。それでいてなぜか余韻の残る映画だった。
それに日本情緒も少し加味されているようだ。オープニングが不可思議で、黒子が現れテーブルや椅子、ファイルや事務用品まで整える。おまけに素っ裸の女が現れ、片隅で大口を開けているワニに自ら飲み込まれて行く。音楽はかねや太鼓、つづみで構成されていた。
監督
ピエール・ショレール1961年生まれ。
キャスト
オリヴィエ・グルメ1963年7月ベルギー生まれ。
ミッシェル・ブラン1952年6月フランス生まれ。