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涙がとめどもなく流れる「奇跡のひと~マリーとマルグリット’14」劇場公開2015年6月

2015-12-13 18:19:43 | 映画
                
 フランス19世紀末、見えない聞こえない喋れないという触覚だけが頼りの三重苦を背負ったマリー(アリアナ・リヴォワール)が修道院へ父親に連れられてくる。受け入れて世話をするのはマルグリット(イザベル・カレ)。

 マルグリットは次のような日記を書いている。「5月10日 今日 魂に出会った。小さくもろい魂。驚くべき魂。囚われた檻の中から魂が輝いていた。木に登る前は野生児だと思った。小さな獣だと、でも彼女は私を待っていた。闇と沈黙に閉ざされた世界。どうやって会話しよう? 完全な闇と沈黙の中で生きるとは?」

 清らかな朝を見ることも、美しい音楽を聴くことも、愛を囁くことも出来ない世界を想像出来るだろうか。想像すると息苦しくなって神の理不尽さに怒りをぶつけたくなる。学院長(ブリジッド・カティヨン)を説得してマリーの世話役になったが、食べないし暴れるしで手に負えず諦めの境地にもなった。

 6月15日の日記「素晴らしい進歩。言葉がほとばしる。最初の一語には苦労したが、その後はまるで奇跡のようだ。すべてを知りたがる。単語と次は形容詞、文章、文法、抽象語。死ぬまでにすべてを教えたい」

 小雪の舞う明るい庭でマリーは微笑む。久しぶりの両親との対面。親子三人抱き合ってうれし涙に暮れる。そっと席をはずして庭に出たマルグリットが倒れる。マルグリットには重い持病があった。

 マリーに告げると彼女は動揺するだろうから内緒に……これが裏目に出てマリーは手に負えない獣になった。やがて真実を告げると、彼女はマルグリットの状態を理解したようだ。

 マルグリットに会いたい。静養するマルグリットに笑みを浮かべたマリーが食事を運んでくる。それを見届けたかのように、マルグリットは死出の旅路についた。

 ある晴れた日、マリーはマルグリットの十字架に花束を添えた。そして天に向かって語りかける。手話の指や腕がまるでダンスをしているように「マルグリット、あなたを想っています。一日中、想っています。朝起きるとあなたを想っています。夜寝るときあなたを想っています。新しいことを学ぶとき、あなたを想います。たくさんのことを学びました。 空から私を見て誇りに思ってください。今日、新しい女の子が来ました。私のように耳が聞こえず、目が見えません。でも私とは違います。彼女は叫ばないし、動き回らないし、いい匂いがします。パンの匂いです。彼女は待っています。何を待っているのか? 言葉を待っています。シスターたちが教えます。あなたが私にしてくれたように、私がお手伝いします。友達になりますように」

 エンドロールの前に次の字幕が入る。「マリーは寄宿生としてラルネイ聖母学院に残り1921年7月22日に36歳で亡くなった。読書とゲームが好きで死ぬまで勉学を続け、多重障害を持つ娘たちのよき導き手となった」

 マリーの手話が鮮やかでかなり練習したのだろうと思っていたら、マリー役のアリアナ・リヴォワールにはこんなエピソードがあった。

 映画サイト「映画.com」から引用しよう。 「盲ろうであるだけでなく、人間的な教育を受けるまで野生児のように生きる少女を演じられる女優を求め、アメリス監督はいくつもの若い聴覚障害者のいる学校をたずねたという。そんな中で、オーディションに“来なかった”少女がリヴォワールだった。そもそも、演じることに興味はなかったのだろうか。
 「学校に貼られていた募集告知が、あまり私の興味をそそる書き方ではなかったの」ときっぱり。そんなリヴォワールの快活さと強さが、マリー役にぴったりだとアメリス監督は確信したそう。
「でも、実際監督に会って作品を紹介してもらって、すぐにこの役を演じたいと思ったわ。シナリオのディテールも気に入ったの」

 制作時にはまだ20歳に届かないアリアナ・リヴォワールは、かなりしっかりした女性のようだ。好感が持てるルックスもいい。
           
           
           
           
           
           
           
           
           
           

監督
ジャン=ピエール・アメリス1961年7月フランス、リヨン生まれ。1996年カンヌ国際映画祭ユース賞受賞。

キャスト
イザベル・カレ1971年5月パリ生まれ。2002年セザール賞主演女優賞受賞。2010年「匿名レンアイ相談所」で主演女優賞ノミネート。
アリアナ・リヴォワール1995年3月フランス生まれ。
ブリジッド・カティヨン出自不詳
コメント
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