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パリの不動産事情が学べる「パリ3区の遺産相続人 ’14」劇場公開2015年11月

2016-07-07 21:03:26 | 映画

                 
 ニューヨークからパリ3区と4区にまたがる、かつての貴族の建物が残る最も優美なマレ地区にやってきたマティアス・ゴールド(ケヴィン・クライン)は、周囲をきょろきょろと見回しながら昔ながらの狭い街路をボストンバッグを提げてうろつく。お目当ては父からの遺産、アパートメントだ。

 ようやく探し当てたそのアパートは、大きな木の扉を入ると広い庭が広がっていた。「ハロー!」鍵のかかっていないドアを開けて中に入る。人の気配がない。いくつもある部屋のドアを開けて覗く。誰もいない。ようやく見つけたのはお昼寝中のマティルド・ジラール(マギー・スミス)。

 ここからマティアスとマティルドの会話が面白く、ニューヨーカーには信じられない「ヴィアジェ」という不動産事情に行き着く。ニューヨークから素寒貧でやってきたパリ。このヴィアジェのせいで毎月2400ユーロを払う羽目になろうとは夢にも思わなかったマティアス。

 さて、このヴィアジェ、住宅を買った場合売主が死亡するまで居住する権利を保証しなければならない。しかも毎月一定の金額を払わなくてはならない。買ってすぐに住めないは毎月一定額を払わないといけないはで何の得にもならないようだが、どういう計算方法か知らないが高級住宅地の物件を格安で手にする一つの方法らしい。

 売主が高齢者ならこんないい制度はない。たとえ相場の半値であっても、一時金と毎月の収入が保証される。死んでからいくら高額に売れても本人には関係がない。生きている間に人生を楽しめるほうが断然いい。年金以外に別途収入2400ユーロ(7月6日午後3時現在の相場111,55とすると約26万円強)が入るとなれば少し贅沢でも構わない。

 ちなみにヴィアジェの意味が「終身年金」となれば、まさにこの映画の女主人マティルドのようにお手伝いさんを雇っていて自分で料理をすることはない。午後8時の夕食には、ローソクの光を部屋一杯に満たして、まるでレストランの雰囲気の中、赤ワインを飲む習慣もあり、「これは10年寝かしたものよ」なんていう。別の日にはシャブリを飲みポルヘノールが含まれる赤ワインを飲んでいるせいか90歳になっても元気。

 そういう事情でマティルドを追い出せないとなると、マティアスにとっては2400ユーロを払ってでもこのアパートに住み着くしかない。マティルドには娘が一人いる。クロエ(クリスティン・スコット・トーマス)と言い、母マティルドの英語教室を継いでいる。オールドミスだ。こういう舞台設定だと物語りの行く末はほぼ分かる。マティアスとクロエのハッピーなロマンスで終わる。

 90歳のマティルドにも、若かりしときには幾多のロマンスの経験者。それが意外な方向に向かうが、それは映画を観ていただくしかない。

 いずれにしても会話の妙もあり、またセーヌ川のテラスでオペラを歌っている女性に唱和するマティアスというたおやかな場面。さらにネットで検索していると本格オペラ鑑賞ができるレストラン「BEL CANTO PARIS」があることも分かってくると1年でもいいから住んでみたくなる。そんなことを考えながら観ていた映画ではある。ヨーロッパ好きには必見かも。
                
                
                
                
                
                
                


監督
イスラエル・ホロヴィッツ1939年3月マサチューセッツ州生まれ。

キャスト
ケヴィン・クライン1947年10月ミズリー州セントルイス生まれ。
クリスティン・スコット・トーマス1960年5月イギリス生まれ。
マギー・スミス1934年12月イギリス生まれ。


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