第72回ゴールデンブローブ賞外国映画賞と第67回カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞。第87回アカデミー賞外国語映画賞ノミネートというロシア映画。ロシア映画は初めて観る。
映画を観終わったらその映画の情報をネットで検索するのがいつものパターン。どなたも同様かもしれない。
この映画の場合、原題が「LEVIATHANリヴァイアサン」で、このリヴァイアサンは旧約聖書のヨブ記やイザヤ書に描かれる海の怪物で、一人の人間が歯向かうことのできない権力の象徴「国家」をリヴァイアサンとして例えたという解説や感想が多い。
この映画でもロシア正教会の牧師が説教をたれるが、あの「神云々」がどうも苦手で、宗教という面を頭からカットして観た時何が見えるのか。リヴァイアサンには愛や憎悪、嫉妬を表象という側面もあるらしいのでそちらに重点を置いた。
舞台はロシア北部バレンツ海に面した小さな町。季節は夏の終わりか、この町の衰退が映し出される。朽ち果てた漁船の残骸、波打ち際に横たわる巨大な鯨の骨格、色褪せた草、未舗装の道路、今にも壊れそうな建物。荒涼たる風景。
夜明け、小さなボートが水面を滑っていく。その傍らの一軒の家に電灯が点く。一人の男が出てきて車に乗り込み発進する。鉄道の駅の駐車場にその車は止まった。駐車場といっても砂利を敷いた広場。列車から降りてきた男と握手。
迎えに来たのはユーリャ(アレクセイ・セレブリヤコフ)、モスクワから列車でやってきたのは弁護士のディーマ(ヴラディミール・ヴドヴィチェンコフ)だった。ユーリャには美人の後妻リリア(エレナ・リャドウ)と十代の息子ロマ(セルゲイ・ポホダーエフ)がいる。
ロマはリリアを嫌っているが、ディーマを父親以上に親しみを感じているようだ。車の修理工場を営むユーリャの生活は豊かとは言えず、リリアも魚処理工場へ早朝から出勤する。そういう庶民の家庭を襲ったのは「立ち退き命令」だった。それに対抗すべく戦友だったディーマに相談した。
異議の申し立ては却下される。そこにはヴァディム市長(ロマン・マディアノフ)の恣意が見られる。市長の黒い過去を洗ったディーマへの執拗な嫌がらせ。そしてリリアとディーマの不倫が発覚。これが家庭崩壊へと拍車をかける。さらにリリアの入水。これを利用したのがヴァディム市長。権力者は司法をも牛耳る。夫ユーリャを殺人容疑で逮捕。裁判は15年の懲役刑。
これらのストーリーの中で印象に残ったのは、携帯電話の普及があっても狭い公営住宅や砂埃を上げる道路、うらびれた商店、無表情の人たち、ウォッカをがぶ飲みし、たばこを吸っている。社会主義国の貧しさを目の当たりにすることになる。
警官の態度も横柄で威圧的。日本の警官はサービス業に思われる。その警官も歴代の大統領には批判的で射撃の標的にもなる。1960年の黒澤明が監督した映画「悪い奴ほどよく眠る」がぴったりか。本当に悪い奴は表に自分が浮かび上がるようなことはしない。人の目の届かぬ所で、のうのうと枕を高くして寝ているとの意味であるとウィキペディアのあった。
それにしてもリリアを演じたエレナ・リャドウは、日本的な容貌ではあるが角度によってはやっぱり別の骨格とも見える。気になる美人といえる。
監督
アンドレイ・ズビャギンツエフ1964年2月ソ連生まれ。’03「父帰る」’11「エレナの惑い」の作品がある。いずれも評価が高い。
キャスト
アレクセイ・セレヴリヤコフ1964年6月モスクワ生まれ。
エレナ・リャドウ1980年12月ソ連、タンポフ生まれ。
ヴラディミール・ヴドヴィチェンコフ1971年8月ソ連生まれ。
ロマン・マディアノフ1962年7月ソ連生まれ。
セルゲイ・ポホダーエフ1998年11月ロシア生まれ。
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