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イタリア政界を風刺する「ローマに消えた男」2013年制作 劇場公開2015年11月

2017-01-08 15:35:12 | 映画

            
 この風刺は、日本にも当てはまる。支持率17%の左翼政党の党首エンリコ・オリヴェーリ(トニ・セルヴィッロ)が突然姿を隠す。忠実な秘書アンドレア(ヴァレリオ・マスタンドレア)は、深刻な病状ではないが、入院療養中だと説明。実際は行方を掴んでいない。早晩、言葉で糊塗するのは行き詰る。

 そのエンリコは、有名映画監督の妻で元恋人ダニエル(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)のパリの居宅に転がり込んでいた。要するにプレッシャーに押しつぶされた。

 日本でも支持率17%どころか10%もない野党が目白押しの状況でも党首の雲隠れは聞かない。赤信号みんなで渡れば怖くない。 という心境なのだろうか。

 いずれにしても早くエンリコを探し出さなくてはならない。エンリコの妻アンナ(ミケーラ・チェスコン)は、疎遠な双子の兄ジョヴァンニ・エルナーニ(トニ・セルヴィッロが二役)という哲学教授の存在をアンドレアに告げる。

 住所地を探し当てドアの向こうに立つジョヴァンニを見て一瞬言葉を失う。双子の兄弟とは聞いているが、まさに党首エンリコに見える。話してみるとエンリコと対照的な性格だった。明るく物怖じしないでズバズバと考えを言う。それがなんとも魅力的に思える。

 「凡庸な政治家は、凡庸な選挙民が作る。泥棒政治家を作るのは、泥棒志望の選挙民」さらに「瓜二つのニセ物と複製と模造品でバカを自覚するバカが国会にはいない」

 アンドレアの頭の中で、あるプランが芽生える。アンナに持ちかけ承諾を得る。

 エンリコの影武者ジョヴァンニは言う。「新たな破局が取りざたされている。その真偽はともかく、我々が目にするのは政治や産業が破局の上で富み栄える姿だ。我々はこうした事態にいつまで耐えるのか。もう充分ではないか。
 破局という言葉が他人事でないのがわが党ですが。我々が先陣を切りこの流れを断とう。我々は優柔不断で空疎な存在だった。あやふやで意志薄弱、万時が人任せだった。我々には明確に語る声がなかった。誰かが声を上げることがあっても、誰の耳にも届かなかった。
 私は誓おう。今こそ我々は変わる。私がここにきたのは、明日にこう言われないためだ。あの時代が暗かったのは、誰もが黙っていたからだと」

 国民の心に届かない言葉は、黙っているのと同じだと言いたいのかもしれない。そういえば日本にもこういう政党があるなあ。

 ジョン・F・ケネディの「国が諸君のために何が出来るかを問うのではなく、諸君が国のために何が出来るかを問うてほしい」というスピーチのもじりもあって大観衆を集め支持率が上向く。

 一方、パリのエンリコはダニエルの誘いもあって映画撮影の現場で手伝っていた。若い女性に言い寄られ鼻の下を長くして至福のときを過ごしたりする。が、かつての恋人ダニエルへの思いは断ちがたく、夫の留守中熱いキスを交わす。
 しかし、人妻になったダニエルとは続けるわけにいかず、置手紙とともに過去を清算した。この映画の題名「VIVA LA LIBERTA 」自由万歳とでも言いましょうか。いずれにしてもエンリコは自由を得たわけ。

 そして影武者が影武者でなくなり、ジョヴァンニがエンリコになった。

 よく分からないところもある。最初のシーンで党大会へ向かうとき、案内の女性の首に蛇の刺青があったり、ジョヴァンニが女性首相との会談で素足になってタンゴを踊る。まあ、そんな些細なことは気にしなくてもいい。

 二役を演じたトニ・カルヴィッロは出演当時54歳、54歳にしては老けている感じだが、なかなか味のある俳優で余情の残る映画だった。
  
監督
ロベルト・アンドー1959年1月イタリア、パレルモ生まれ。

キャスト
トニ・セルヴィッロ1959年1月イタリア、ナポリ生まれ。
ヴァレリオ・マスタンドレア1972年2月イタリア、ローマ生まれ。
ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ1964年11月イタリア、ペドモント生まれ。
ミケーラ・チェスコン1971年4月イタリア生まれ。

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