どこかで隣の国同士が戦争をやっている。故あってコスタ(エミール・クストリッツァ)は、ハヤブサを肩に、ロバに乗ってミルクを前線に届ける仕事をしている。ミルクを作るのは元体操選手のミレナ(スロボダ・ミチャロヴィッチ)で美形。ミレナはコスタに思いを寄せるが、コスタはそれほどでもない。
ミレナには戦争に参加している兄のジャガ(プレドラグ・マイノロヴィッチ)がいる。戦争が終われば帰ってくるはずで、今からお嫁さんを用意しようと奮闘する。ある男から紹介されたのが超美人の女性(モニカ・ベルッチ)だった。彼女を見たコスタは、絶世の美女に見え心を惹かれる。
故あるコスタだがその故とは、父が目の前で斬首され弟は精神病院へという恐ろしい記憶を持っている。絶世の美女も過去に忌まわしい記憶を持っている。母親はイタリア人、父親はセルビア人でローマから父親を捜しに来て、戦争に巻き込まれる。
流民となったが英国人の将軍と深い仲になり、この女のために将軍は妻を殺した。まずいことに彼女は不利な証言をして将軍は刑務所に入った。将軍が出てきたら……彼女は脅えている。
動物たちが面白い動きをする。コスタは楽器奏者でもあって、その演奏に合わせてハヤブサが肩を動かして踊る真似をする。また、鏡の前でニワトリが、飛び跳ねる自分を見ている。大時計の針はくるくると回って止まる気配がない。
兄が帰って来てミレナは、兄妹同時結婚と言ってはしゃぐ。今一つ乗り気でないのがコスタ。そんなある日、戦争が終わった。酒をがぶ飲み、踊り狂う。イタリア生まれのモニカ・ベルッチもユーゴスラビア生まれのスロボダ・ミチャロヴィッチも情熱的でセクシー。
そんな喧騒をよそにヘリコプターから垂れ下がったロープを伝って降り立ったのは、黒ずくめの特殊部隊兵士だった。どこの国の兵士か分からないが、かつてのナチスドイツ軍のヘルメットをかぶっている。いずれにしても将軍の報復に違いない。この村を皆殺しにするつもりらしい。火炎放射器の炎がすべてを焼く尽くす。
井戸に隠れて難を逃れたコスタと美女(モニカ・ベルッチ)は、川を下り絶対絶命の滝が目の前に。二人は手に手をとって滝壷へ。ここはファンタジーの世界。湿地帯や水の中に隠れながら羊の群れに追い込まれる。すぐそばに地雷原がある。
その地雷原を突き切ろうとして羊の群れを地雷原に追う。羊が地雷に触れて次々と倒れていく。硝煙の中から「止まれ!」ついに特殊部隊に捕まった。この兵士も最後の生き残り。いきなり羊を追って駆け出した美女。先を行く羊が地雷で爆死。別の地雷が見える。その時、大蛇が現れ美女をぐるぐる巻きにして爆死を免れる。
銃を突きつけられたコスタは隙を見て兵士と格闘。その時現れたのがハヤブサ、コスタの肩に止まり兵士の目玉をくちばしでくりぬいた。痛みで飛び上がり駆け出して地雷に触れ爆死。
「蛇を放せ、そこを動くな」というコスタの声も虚しく美女も地雷に触れて死んでしまった。身はばらばらになり美女の思い出だけがこの地に残った。
15年後、神職に携わるコスタは、石切り場から人間の頭大の石を担いでこの地雷原を覆い始め、あと少しで完成する。ここは美女の聖地であり、愛がいっぱい詰まった場所でもある。愚かな戦争をやんわりと否定していて、風刺のきいたこの愛の物語をファンタジックでミステリアスなコメディに、監督のエミール・クストリッツァ自らが絶世の美女モニカ・ベルッチのお相手となって思いっきりお遊びのよう。
監督
エミール・クストリッツァ1954年11月ユーゴスラビア、サラエヴォ生まれ。
キャスト
モニカ・ベルッチ1964年9月イタリア、ベルージャ生まれ。
エミール・クストリッツァ
プレドラグ・マイノロヴィッチ1950年4月ユーゴスラビア、ベオグラード生まれ。
スロボダ・ミチャロヴィッチ1981年8月ユーゴスラビア生まれ。