「イェルチンに捧ぐ」とエンドロールで献辞されるように、27歳の若さでこの世を去った主役のアントン・イェルチンに、鎮魂の意を込めた遺作となった。
「ポルト」は、ポルトガル北部の第二の港湾都市でここに二人の男女がまみえるさまに、人生の大半を経過した人にはそれぞれの体験を重ね合わせることが出来るし、若く道の先がまだよく見えない人には、将来こんなロマンスが待っているかもしれない。
アメリカ人のジェイク(アントン・イェルチン)26歳。古代遺跡の発掘現場で見かけた女性と街のレストランで偶然出会う。その女性はフランス人のマティ(リュシー・リュカ)と言い32歳の考古学専攻の学生だった。
ジェイクは決まった職がなく、臨時の仕事で糊口をしのいでいる。父親が厳格な外交官でジェイクは家を飛び出している。一つに弟の結婚について父親が認めなかったことがある。ジェイクは今、人生をさまよっている状態だ。
マティにしても、一時うつ病に悩まされたことがあり未だ完治していない。問題を抱える男と女が出会いすぐにセックスへと向かう。
この映画は3部構成になっていて、上記はパート3の部分。パート1がジェイク。「仕事が嫌いだ」というジェイクは、街をさまよいマティに会い、一夜を共にしたが彼女と離れているととてつもない寂しさに襲われ携帯でマティを呼び出す。しかし、マティの応答はない。ジェイクはマティのアパートの前で早朝から待っていて、出てきたマティを捉まえて「いつも側にいたい」と哀願する。マティは「帰って!」と言ってドアを閉めてしまう。怒鳴ろうが叩こうがドアはピタリと閉じたまま。挙句の果てにマティは、接近禁止命令でジェイクを遠ざける。
パート2マティ。ジェイクとは一時的な火遊びだったがマティは結婚した。一児を儲けたが今は離婚している。ベランダでタバコを吸いながら何かを思う。
離れ離れのジェイクとマティではあるが、二人とも思い出のレストランの前を通り過ぎる時、思わず窓から中を覗く。彼らの人生にとってあの一夜ほど充足したものはない。
パート3の5分にも及ぶセックス・シーンは、驚くほどリアルだ。俳優が本当にセックスをしているのではないかと思ったくらいだ。映像がスーパー8、16ミリ、35ミリフィルムのためデジタル映像ほど鮮明でなく影の部分が多いのも卑猥な感じを薄めている。人生の中で再現したくなる思い出がある。そんなことを思わせてくれた映画だった。2016年制作 劇場公開2017年9月
監督
ゲイブ・クリンガー1982年7月ブラジル、サンパウロ生まれ。
キャスト
アントン・イェルチン1989年3月ソ連、レニングラード生まれ。2016年6月没。
リュシー・リュカ出自未詳。
パウロ・カラトレ出自未詳。
フランソワーズ・ルブラン出自未詳。