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映画「運び屋The Mule」原題のMuleには、ラバ、頑固者の意がありその通りの物語

2019-06-23 16:14:38 | 映画

             

 アール・ストーン(クリント・イーストウッド)は、自ら経営するサニーサイド花農場で一日しか咲かない「デイリリー」の生育に命をかけていると言っても言い過ぎではない。人物は万人に愛される男なのだ。

 デイリリー品評会にスーツにネクタイ、粋なストローハットで現れ愛嬌を振りまく。
「ティム・ケネディ たまげたな、死んだと思っていたよ。死ぬ運もなしか?」
「クソ野郎って言われたことは?」とケネディ。
それに答えて「いつもだ。スペイン語でも」とアール。

 会場を進んでいくと女性のグループに「会場を間違えてる。美人コンテストは3階だ」と自尊心をくすぐり笑いを誘う。アールの持つコーナーで花を配る。有名なアールに人が群がる。「すごいな。バイアグラを配ってるんじゃないぞ」と皮肉り、女性から「ジェームズ・スチュワートのマネ?」と皮肉を返される。

 さて、ジェームズ・スチュワートが出てきた。この俳優を知るのは、恐らく高齢者たちだろう。品評会も高齢者や女性の集まり。年代を反映するセリフが埋め込まれている。

 品評会で金賞受賞は、アール・ストーンに決まった。受賞スピーチ「ブーイングはなし、ありがとう。退屈なスピーチよりちょっとしたジョークでも。なぜ園芸家がホテルのロビーを歩いていたと?」会場から「なぜ?」の声。「バーに行くためだ。私も同じです。ありがとう」爆笑に包まれる。

 人は意外な側面を見せる。この愛嬌のある好まし人物も家庭ではどうか。彼の妻メアリー(ダイアン・ウィースト)に言わせると「洗礼式、堅信式、卒業式にも来なかった。誕生祝いも結婚記念日も無視する」アールの娘アイリス(アリソン・イーストウッド)の結婚式にも来ない、だから別居中。アイリスは、アールとは無言の時間を12年費やす。

 12年後の2017年、孫娘のジニー(タイッサ・ファーミガ)の婚約パーティにアールが現れた。ジニーはおじいちゃんが大好きで、フィアンセに紹介するからとはしゃぐ。そこへ顔を出したのは、妻のメアリーと娘のアイリス。アイリスは、まわ右して帰ってしまう。メアリーは、道路に止めてあるボロトラックの荷台を見て「わざわざ来たのでなく、行くところがないから来たのね」と辛辣。

 確かにインターネットの通信販売の隆盛に種の店売りが減り、倒産に追い込まれたサニーサイド花農場だった。悄然と立ち去ろうとするアールに声をかけた男がいる。ジニーの友達の友達という男だった。名刺を渡され「車で動くだけでいい。友人がそういう人を探している」

 こうして運び屋になったアール。やがて妻メアリーの死とともにやっと家族の絆が結ばれる。DEA(麻薬取締局)に逮捕され裁判にかけられるが、自ら罪を認め刑務所へ。娘のアイリスが「いるところが分かっていていいんじゃない」という。どこにいるのかと心配する親よりも、刑務所でもいるところが分かっている方が安心という子の心だ。認知症が心配される作今の様子もうかがえる。

   

   

   

 家族の映画として仕上がっている。これは実話だそうだ。レオ・シャープという90歳の男の話で、ニューヨーク・タイムズが記事にした。アメリカのロード・ムービーは、カントリー音楽が付きもの。本作も、ウィリー・ネルソン始め多くの挿入歌がある。エンドロールに流れるトビー・キースの「老いを迎え入れるなDon't Led The Old Man In」という曲がいい。クリント・イーストウッドの映画には、ハズレがない。

   

老いを迎え入れるな

もう少し生きたいから

老いに身をゆだねるな

ドアをノックされても

ずっと分かっていた

いつか終わりが来ると

立ちあがって外に出よう

老いを迎え入れるな

監督
クリント・イーストウッド

キャスト
クリント・イーストウッド1930年5月カリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。

ブラッドリー・クーパー1975年1月ペンシルヴェニア州フィラデルフィア生まれ。

ローレンス・フィッシュバーン1961年7月ジョージア州オーガスタ生まれ。

マイケル・ペーニャ1996年1月イリノイ州シカゴ生まれ。

ダイアン・ウィースト1948年3月ミズリー州カンザスシティ生まれ。1986年「ハンナとその姉妹」でアカデミー賞助演女優賞受賞。

アリソン・イーストウッド1972年5月カリフォルニア州サンタモニカ生まれ。

タイッサ・ハーミガ1994年8月ニュージャージー州生まれ。

アンディ・ガルシア1956年4月キューバ、ハバナ生まれ。