バレエ・ダンサーとタップ・ダンサーの偶然の出会いが、素晴らしいダンス・シーンと運命を左右する脱出劇がスリリング。
北極圏を飛行中の旅客機には、東京公演に行くバレエ・ダンサー、ニコライ(ミハイル・バリシニコフ)が乗っていた。ニコライはカナダで亡命、今はアメリカ国籍を持っている。順調に行けば何事もなかったが、旅客機の電気系統の故障でシベリアのソ連空軍基地に不時着陸を余儀なくされた。
着陸のとき怪我をして入院。そこへKGBのチャイコ大佐(イエジー・スコリモフスキ)のさりげない訪問ではあるが「ニコライ、お前の正体は見え見えだぞ!」と脅されながら暴かれる。
そして預けられたのは、ベトナム戦争で黒人兵が白人兵よりも多く戦死しているとしてアメリカを見限って亡命したレイモンド(グレゴリー・ハインズ)の小さな家だった。レイモンドにはソ連人の美しい妻ダーリャ(イザベラ・ロッセリーニ)がいた。
ニコライはレイモンドをKGBの手先だと思い、奇しくもアメリカを捨てた男とアメリカを求めた男が対峙する格好となった。KGBのチャイコ大佐は、ニコライを彼の故郷ともいえるキーロフバレエ団の本拠地マリンスキー劇場の舞台にもう一度立たせたいと願っていた。勿論、狡猾な大佐のこと素直には受け取れないが、ニコライのかつての恋人カリナ(ヘレン・ミレン)を練習のスタジオに顔を出させた。何か企んでいるのは確かだ。
この映画の白眉は、相手を理解したニコライとレイモンドのバレエとタップが融合したダンス・シーンだろう。
そしてニコライ役のミハイル・バリシニコフのバレエ・ダンサーとしての凄さがオープニングの踊るシーンからも分かる。
30年ほど前の映画ではあるが、現在の音楽シーンが劇的に変わったとも思えないし、ファッションもしかり、ジーンズとジャケット、スカートとブラウス。現代とさほど変わっていないのには一種の驚きだった。
これらの文化面ではこれからの30年もあまり代わり映えしない気がする。このDVDには、監督の音声解説が収録してあって、それによるとアメリカ南部では、グレゴリー・ハインズ(黒人)とイザベラ・ロッセリーニ(白人)の濃密なラブシーンに異論がでた。従ってこのラブシーンはカットしたという。
人種間アレルギーなんだろうか。これは30年前の話。 が、現代はどうだろう。白人と黒人のラブ・ロマンスは結構多く描かれているが、個人的にはやっぱり雰囲気に乗れない。偏見といえば偏見だが。
イザベラ・ロッセリーニが母親のイングリッド・バーグマンにそっくりなのが印象的だった。さて、多くの曲が挿入されていたが、フィル・コリンズとマリリン・マーティンの「Separate Lives」がわたし好みだった。その曲をどうぞ!
監督
テイラー・ハックフォード1945年12月カリファルニア州サンタバーバラ生まれ。1982年「愛と青春の旅立ち」では、アカデミー賞助演男優賞をルイス・ゴセットjr、歌曲賞「Up Whre We Wrong」を受賞。この映画にも出演しているヘレン・ミレンは奥さん。
キャスト
ミハイル・バリシニコフ1948年1月ソ連生まれ。
グレゴリー・ハインズ1946年2月ニューヨーク生まれ。2003年8月ガンで死去。
イザベラ・ロッセリーニ1952年6月イタリア、ローマ生まれ。
イエジー・スコリモフスキ1938年5月ポーランド、ワルシャワ生まれ。
ヘレン・ミレン1945年7月ロンドン生まれ。
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