韓国ウォン急落、3度目の通貨危機に沈むか?~日本へ急接近する狙い=勝又壽良
韓国経済は、厳しい局面へ向かっています。対ドルのウォン相場が急落しているからです。為替相場は国力のバロメーターです。ウォン安は、韓国の国力が低下していることを表しているのです。
韓国は、過去2回も通貨危機に見舞われています。対GDPの輸出依存度の高いことが、世界経済の影響を敏感に受ける体質を形成しました。現在の輸出依存度は、約40%になっています。(『勝又壽良の経済時評』勝又壽良)
※本記事は有料メルマガ『勝又壽良の経済時評』2019年5月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。
元『週刊東洋経済』編集長。静岡県出身。横浜市立大学商学部卒。経済学博士。1961年4月、東洋経済新報社編集局入社。週刊東洋経済編集長、取締役編集局長、主幹を経て退社。東海大学教養学部教授、教養学部長を歴任して独立。
若者の失業が急増中。対中貿易の不振で韓国経済は行き詰まりへ
ウォンは通貨のカナリヤ
韓国経済は、米中貿易戦争の影響を強く受けます。韓国輸出の約4分の1が対中輸出です。さらに、全輸出の5分の1は、半導体が占めています。実は、この中国と半導体が、いずれも不振であるという事態に追い込まれています。こういう韓国の輸出構造から見て、ウォン相場は、アジア通貨では「カナリヤ」と見られています。
カナリヤは昔、坑道に入って作業する鉱夫の安全管理のために利用されてきました.坑内に有毒ガスが発生した場合、カナリヤが最初に反応するという特性を利用したものです。この伝でいけば、韓国ウォン相場の急落はアジア通貨異変の兆候と見られています。韓国にとってはなはだ迷惑な話ですが、貿易構造がそうなっている結果です。韓国人特有の「ひがみ根性」から言えば、承服できない話でしょう。
韓国は、これから世界三大格付け会社が、相次いで格付け作業に入ります。すでに、S&Pの審査は終わりました。結果は発表になっていませんが、「条件」が付くという予測がされています。つまり、半年後の「見直し」条件です。もし、格付けで引き下げられることがあれば、文在寅政権のメンツは丸潰れになります。
これまで、「マクロ経済は相対的に良好である。間もなくその成果が国民に届く」と確言してきました。それが、格付け会社の総合判断によって覆されれば、文政権は責任問題に発展します。
来年4月は、国会議員の総選挙です。格付け会社によって、経済実態が不調であると判断されれば、総選挙の結果に響いて来ます。与党の「共に民主党」が敗れれば、次期大統領選にも響きます。
このように、韓国は経済次第で政治状況が変わるので、ウォン相場の推移に注目が集まります。与野党が、逆転する事態も起こりかねません。
以上で、概略の説明を終えて、具体的に韓国経済の問題点を探って行きます。
1200ウォン割れ危機
対ドルのウォン相場が、一気に10ウォン以上も下落し、1190ウォンまで迫っています(※原稿執筆時点:2019年5月16日時点)。5月15日の終値は、1188.6ウォンで前日比0.8ウォン高となりました。1200ウォンが「マジノ線」と意識されています。理由は、このラインを割って下げ続けると、ウォン投機売りを誘い込み一気に危機ラインの1400ウォンへ持って行かれるリスクを抱えているからです。過去2回、韓国は通貨危機に陥っており、塗炭の苦しみを味わいました。耐乏生活を強いられたからです。
ウォン相場と関係の深い輸出は、昨年12月から前年同月比マイナスを続けています。5月に入ってもこのマイナス基調が続いています。これで、6ヶ月連続で前年比マイナスとなります。マイナス要因は、先に指摘しました対中国輸出と半導体輸出が振るわなかったことです。
この2要因は、今後どうなるでしょうか。
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