ロシアによるウクライナ侵攻から、戦争で使われる武器が大きく変わった。情報収集や爆撃のために、双方がドローンを大量に投入。SNSによる情報戦や、インターネットを介したボランティアなども広がった。この変化に対応し、日本も抜本的な防衛力のアップデートに踏み切る。中国、ロシア、北朝鮮によるリスクを踏まえた防衛3文書を取りまとめ、民生・軍事の境目なく、関連産業を育成する方針を打ち出した。サイバー攻撃や人工知能(AI)の利用などで、姿を変えていく戦場。デジタルトランスフォーメーション(DX)による防衛力の革新は待ったなしだ。

 ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから、この7月で約500日が経過した。両者は一進一退の攻防を繰り広げ、その様子はSNSを通じてほぼリアルタイムに報告される。ここにきて目立つのがドローンの活用だ。

ドローンの飛行訓練に参加するウクライナ軍の兵士(写真:ロイター)

ドローンの飛行訓練に参加するウクライナ軍の兵士(写真:ロイター)

 「前夜、ロシア軍のイラン製軍事用ドローン54機が攻撃を仕掛けてきたが52機を撃墜した」。ウクライナ軍は5月28日、SNSで報告した。ロシア軍も「6月21日、首都モスクワ郊外にドローンで攻撃を受けたものの電波妨害によって迎撃した」とSNSで発表している。

ウクライナ軍の自爆型ドローン(写真:ZUMA Press/アフロ)
ウクライナ軍の自爆型ドローン(写真:ZUMA Press/アフロ)

■主な連載予定(タイトルや回数は変わる可能性があります)
・戦車とドローン、肩並べる破壊数、ウクライナで開くパンドラの箱(今回)
・狙われた通信・電力・金融インフラ、サイバー攻撃は国家ぐるみ
・あなたの仕事はもう「防衛産業」の一端を担っている
・自衛隊はほんの数年前「ドローンのニーズはない」と言い切っていた
・ロボット兵士「LAWS」がやってくる 殺人マシンか人道兵器か
・5年で43兆円、増額される防衛費、AI活用で見えるのは光か影か

 ウクライナ軍はロシアの侵攻以降、破壊したロシア軍の兵器数をほぼ毎日発表している。ウクライナ軍が破壊したロシア軍のドローンは6月27日時点で累計約3500機に達した。4月以降、急激に増えており、その数はウクライナ軍が破壊したロシア軍の戦車数とほぼ並ぶ。ドローンは両軍にとって重要な武器になりつつある。

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 「小型爆弾を抱えたドローンが上空から戦車を撃破」──。ウクライナ軍は、戦果をこんな動画で公開する。軍事用だけでなく、わずか数千ドルの民生用ドローンを武器として活用する例も目立つ。

 

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